ニュースで「消費者物価指数が前年同月比2.1%上昇」と聞くことがあります。この2.1%は、何と何を比べた数字なのでしょうか。この記事では、消費者物価指数(CPI)の読み方を、2026年9月分の数字で順に確かめます。物価そのものの考え方は、物価とはで説明しています。
- 消費者物価指数は、家計が買う品物とサービスの値段の動きをまとめ、基準の年を100として表した数字。いまは2025年=100
- 指数(102.2など)と変化率(2.1%など)は別の数字。変化率は、何と比べたかで変わる
- 「総合」「生鮮食品を除く総合」「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は、計算に入れる品目の範囲が違う
01 消費者物価指数(CPI)とは?
消費者物価指数を作っているのは、総務省統計局です。統計局は、全国の世帯が買う品物やサービスの値段が、平均してどう動いたかを測る数字だと説明しています。ある時点で家計が買っていたのと同じものを、その後も買い続けるとしたら、費用はどう変わるか。それを指数にしたものです。英語の Consumer Price Index の頭文字をとって、CPIとも呼ばれます。
ここで測っているのは、値段そのものの変化です。暮らし方や好みが変わって、買う品物の種類や量が変わると、生活費も変わります。統計局は、消費者物価指数はそうした生活費の変化を測るものではないと注意しています。この違いは、後の「実感」の節でもう一度取り上げます。
02 指数の「100」は何を表す?
消費者物価指数では、基準の年を100と置き、ほかの時点の物価をそれと比べた数字で示します。いまの基準は2025年で、統計局の発表には「2025年=100」と書かれています。
2026年9月の総合指数は102.2でした。2025年の平均を100とすると、それより約2.2%高い水準にある、という意味です。
基準の年は5年ごとに新しくします。基準になるのは、2020年、2025年のように西暦の下1けたが0か5の年です。いまの2025年基準には、2026年8月に切り替わりました。新しい品物が出てきたり、好みが変わったりして、家計の買い物の中身が少しずつ変わっていくためです。基準を変えるときに、計算に入れる品目や重みも見直します。
統計局は、改定の前と後の指数は、厳密には中身が違うとしています。古い資料で「2020年=100」の数字を見かけたら、どの年が100なのかを先に確かめると、読み違えを防げます。
指数はどう計算する?
基準の年に買っていた品物を、同じ量だけ今の値段で買ったら、費用はいくらになるか。その費用を基準の年の費用で割り、100を掛けたものが指数です。統計局は、この計算のしかたをラスパイレス式と呼んでいます。
仮の例で見てみます。家計が買うのは、お米と映画の2つだけだとします。
| 品目 | 基準の年の支出 | 値上がり率 | 同じ量を今年買うと |
|---|---|---|---|
| お米 | 8,000円 | 10% | 8,800円 |
| 映画 | 2,000円 | 50% | 3,000円 |
| 合計 | 10,000円 | — | 11,800円 |
基準の年は、お米に8,000円、映画に2,000円で、合わせて1万円を使っていました。今年、お米が10%、映画が50%値上がりしたとします。同じ量を買う費用は、お米が8,800円、映画が3,000円で、合わせて1万1,800円です。指数は 11,800 ÷ 10,000 × 100 = 118 になります。
値上がり率を単純に平均すると (10 + 50) ÷ 2 = 30% で、指数は130 になってしまいます。実際の家計では、お金を多く使うお米の値上がりが小さいので、118 にとどまります。支出の割合(ウエイト)で重みをつけると、結果がこれだけ変わります。
03 「2.1%上昇」はどう計算する?
変化率は、2つの指数の差を、前の時点の指数で割って求めます。
- 変化率(%)=(今の指数 − 前の指数)÷ 前の指数 × 100
2026年9月の総合指数は102.2で、2025年9月は100.1でした。(102.2 − 100.1) ÷ 100.1 × 100 で、約2.1%です。発表の前年同月比も2.1%の上昇です。
ここで、2つの数字の意味を分けておきます。102.2は、2025年の平均と比べた今の水準です。2.1%は、1年前の同じ月と比べてどれだけ動いたかです。
発表される指数は、小数第1位までに丸めてあります。統計局によると、変化率は丸める前の指数から計算しているので、発表された指数で計算し直すと合わないことがあります。
04 前年同月比と前月比は何が違う?
比べる相手が違います。
| 変化率 | 比べる相手 | 2026年9月の総合 |
|---|---|---|
| 前年同月比 | 1年前の同じ月(2025年9月) | 2.1%上昇 |
| 前月比(季節調整値) | 前の月(2026年8月) | 0.4%上昇 |
前月比には、季節による値段の動きが入ります。衣料品や果物のように、季節によって出回る量が変わり、値段も変わる品物があるためです。そこで前月比は、季節による動きを取り除いた「季節調整値」でも発表されています。
前年同月比は、同じ月どうしを比べるので、季節の違いを考えなくてよい数字です。統計局も、物価の流れをつかむ数字として、主に前年同月比を使っています。
2026年9月分では、発表された総合指数は、8月も9月も102.2でした。それでも、季節調整値の前月比は0.4%の上昇です。発表された指数を並べて見るだけでは、季節の動きを除いたあとの変化は分かりません。
05 総合・生鮮食品を除く総合などは何が違う?
計算に入れる品目の範囲が違います。2026年9月分の3つの数字を並べます。
| 系列 | 指数(前年同月比) |
|---|---|
| 総合 | 102.2(2.1%上昇) |
| 生鮮食品を除く総合 | 102.3(2.1%上昇) |
| 生鮮食品及びエネルギーを除く総合 | 102.8(2.4%上昇) |
計算から除く品目は、次のとおりです。
- 生鮮食品を除く総合:生鮮食品
- 生鮮食品及びエネルギーを除く総合:生鮮食品と、エネルギー(電気代・都市ガス代・プロパンガス・灯油・ガソリン)
単に「消費者物価指数」と言えば、ふつうは総合を指します。統計局は、全部の品目の値動きを反映した総合を、いちばん重要な指標と位置づけています。
ほかの2つの系列は、物価の基調(大きな流れ)を見るために使われます。生鮮食品は、天候で値段が大きく動きます。エネルギーは、海外で決まる原油の値段の影響を直接受けます。統計局によると、こうした一時的な動きや外からの影響を除くと、物価の基調(大きな流れ)を見るのに役立つとされています。
除いたあとに残る範囲は、総合を10,000とすると、生鮮食品を除く総合が9,621です。生鮮食品及びエネルギーを除く総合では8,872です。
「生鮮食品を除く総合」は、「コア」と呼ばれることがあります。ただ、「コアコア」などの呼び名は、いくつもの指標にばらばらに使われているようです。統計局は、そうした指標を使うときは定義を確かめるよう求めています。この記事では、統計局の系列名で書いています。
2026年9月は、総合と生鮮食品を除く総合が、どちらも2.1%でした。数字が同じでも、生鮮食品の値段が動かなかったという意味ではありません。計算に入れる品目の範囲が違う、別々の数字です。生鮮食品とエネルギーも除くと2.4%で、何を除くかによって数字が変わることが分かります。どの品目がどう動いたかは、この記事では扱いません。
日本銀行はどの数字を見ている?
日本銀行は2013年1月、消費者物価が1年前と比べて2%上がることを「物価安定の目標」に掲げました。物価の動きを確かめるときは、家計が買うものを幅広く含み、早く発表される消費者物価指数(総合)が重要だとしています。
同時に、金融政策を進めるうえでは、一時的な要因などの影響を除いた「コア指標」もよく利用されていると説明しています。総合だけを見ているわけでも、コアだけを見ているわけでもありません。日本銀行の役割は日本銀行とは、2%の目標の考え方はインフレとはで紹介しています。
06 CPIと値上がりの実感がずれるのはなぜ?
統計局は、私たちの実感が、日々の買い物の値段に左右されやすいと指摘しています。消費者物価指数は、決めた品目すべての値段を調べ、支出の割合に応じて重みをつけて計算します。毎日買う品物も、年に数回しか買わない品物も、同じ物差しで入っています。
そのため統計局は、必需品かどうかで分けた指数や、買う回数で分けた指数も作っています。必需品やよく買う品物の値上がりが大きいと、物価が上がった感じが強まると考えられるからです。
もう1つは、指数が消費者全体の平均だという点です。買う品物は家庭によって違います。車を持たない家庭なら、ガソリンの値段が変わっても、家計に直接は響きません。消費者物価指数が表すのは、消費者全体の物価の動きで、1つ1つの家計の物価ではありません。収入の多い少ないや、世帯主の年齢ごとに分けた指数も、統計局は作っています。
生活費が増えたら、物価が上がったということ?
そうとは限りません。生活費は、物価が上がらなくても、買う量を増やしたり、高い品物を選んだりすれば増えます。
仮の例で、ある家庭の1か月の生活費が、20万円から21万円に増えたとします。増え方は5%です。同じ期間に消費者物価指数が2%上がっていても、残りの3ポイント分がすべて買い方の変化によるとは限りません。家庭によって、買う品物や量は違うためです。生活費の増え方と物価の上がり方は、同じものではありません。
07 内容量が減った「実質値上げ」は反映される?
値段は同じで、中身が減る商品があります。統計局のQ&Aでは、調べている商品が後継の商品に替わった場面を説明しています。品質は変わらずに容量や重さだけが減ったときは、その分を実質的な値上がりとして指数に反映しています。
統計局の例は、ジャムの値段が同じまま、重さが165gから150gになった場合です。このときは、新しい150gの値段に 165/150 を掛けて計算します。重さあたりで見ると、約1割の値上がりとして扱われるということです。
ポテトチップスや洗濯用洗剤などは、もともと100gあたり、1,000mLあたりのように、量あたりの値段で調べています。中身の量が変われば、その分が値段の変化として表れます。
商品の品質が変わった場合はどうでしょうか。統計局は、調べる商品を入れ替えるときに、新旧の品質の違いによる値段の差を除くよう調整していると説明しています。機能が大きく良くなる家電などでは、平均の購入価格より、指数の上がり方が小さくなる傾向があるとしています。
ここで紹介した扱いは、調べている商品が新しい商品に替わる場面などについての説明です。中身や品質の変化が指数にどう入るかは、調べ方によって変わります。
08 よくある質問
CPIで、昔のお金の価値は分かる?
参考の1つにはなります。ただ、消費者物価指数は、世帯が買う品物とサービスに限った物価の水準です。そのため統計局は、指数がそのままお金の価値を示すわけではないと注意しています。
家や土地の値段は入っている?
家や土地を買う費用は入っていません。財産を手に入れることで、消費の支出ではないからです。その代わりに、持ち家に住む人が、家を借りていたら払うはずの家賃(持家の帰属家賃)を計算に入れています。
最新の数字はどこで見る?
総務省統計局のホームページに、毎月の結果が載ります。発表の日は物価とはで紹介しています。
- 消費者物価指数(CPI)は、家計が買う品物とサービスの値段がどう動いたかを、基準の年を100とした数字で示す。いまは2025年=100
- 指数は基準の年と比べた水準、変化率は比べた時点からの動き。2026年9月の総合は、指数102.2、前年同月比2.1%上昇
- 前年同月比は1年前の同じ月と、前月比は前の月と比べる。前月比は季節の動きを除いた季節調整値でも発表される
- 総合・生鮮食品を除く総合・生鮮食品及びエネルギーを除く総合は、計算に入れる品目の範囲が違う。2026年9月はそれぞれ2.1%・2.1%・2.4%上昇
- 指数は消費者全体の平均。家庭ごとの実感や、生活費の増え方とは一致しないことがある

