離婚あるいは死別によってひとり親家庭(母子家庭・父子家庭)となった場合、両方の親がいる通常の家庭と比べると、さまざまな苦労がつきまとうものです。
近年の政府の調査によりますと、母子家庭の平均年間収入は200万円を下回っており、母子家庭の貧困化が社会的な問題となっていることがうかがえます。
そうした家庭が、通常の家庭と同じように暮らすことができるように、国や自治体、あるいは民間においてさまざまな形で経済的に支える仕組みがあります。
こうした社会に支えられていることに感謝しつつ、その仕組みを利用することは、親子が健康に生活を続けていく助けになるとともに、社会にとっても、お互いが安心して支えあって暮らす豊かな社会のために必要なことです。
今回は、母子家庭や父子家庭の方々が利用できる社会福祉制度などの仕組みをご紹介します。
外部サイト:ひとり親家庭等の支援について|厚生労働省
コンテンツ一覧
母子父子寡婦福祉資金貸付金制度
この制度は、20歳未満の児童を扶養しているひとり親(母または父)、または寡婦が貸してもらうことができる、厚生労働省の制度です。
ここでいう「寡婦(かふ)」という用語については、さまざまな制度の中で定義が違っているので、いわゆる母子家庭や父子家庭に該当するかもしれないと思われた方は、それぞれの制度の担当窓口にお問合せされたらよろしいと思います。
この制度は、生活に関わるさまざまな内容に対応した資金の種類を定められていて、利用することができるようになっています。具体的にはこんな感じです。
事業開始資金/生活資金/事業継続資金/修学資金/修業資金/住宅資金/就職支度資金/医療介護資金/技能習得資金/転宅資金/就学支度資金/結婚資金
そして、これらの資金の種類によって、対象者や限度額、利子の有無、償還期間などが細かく定められています。
申請・問合せ先は、各地方公共団体の福祉担当窓口ですので、まずはご自身がこれらの制度の対象になっているかどうか、相談してみてはいかがでしょうか?
外部サイト:母子父子寡婦福祉資金貸付金制度について|男女共同参画局
寡婦(寡夫)控除、国民健康保険や国民年金制度での優遇
税制上の優遇として、寡婦および寡夫には所得の控除が認められています。
また国民健康保険や国民年金においても寡婦は優遇、あるいは免除される場合があります。これらについても、まずはお住まいの市役所などにご相談してみてください。
外部サイト:寡婦(寡夫)控除について|国税庁
児童扶養手当や児童育成手当
児童手当など子育て世帯を対象とした手当もありますが、シングルマザーが利用すべき母子家庭を対象とした手当も存在します。
『児童扶養手当』は物価や所得によって受給できる額に変動があるものの約5万円を受け取ることができ、子供の人数が増えると受給できる額も増えていきます。
他にも児童1人につき13,500円が支給される『児童育成手当』もあります。
ただ児童育成手当は東京都が行っている制度であり、自治体によっては同等の制度が無いことも内容に違いがあることもありますのでご注意ください。
その他の手当や助成金など
上記の他にも、さまざまな手当や助成金、税金などの減免や割引の仕組みがあります。
自治体によって違いがありますので、具体的にどういう制度があって使えるのか、問い合わせてみるのがおすすめです。
児童手当/母子家庭の住宅手当/
母子家庭の遺族年金/生活保護/障害児福祉手当/特別児童扶養手当
こども医療費助成/母子家庭(ひとり親家庭)の医療費助成制度
電車やバスの割引制度/児童育成手当/粗大ゴミの手数料の減免
保育料の免除や減額/上下水道料金の割引…など
外部サイト:子ども・子育て支援 母子家庭等関係|厚生労働省公式サイト
自立支援教育訓練給付金
厚生労働省が自治体と協力して実施している、ひとり親世帯の経済的な自立を支援するために、雇用保険から教育訓練給付を受給できない場合に経費の一部を負担してくれる制度です。
対象となる教育訓練を受講して終了した際に、その経費の60%(上限20万円)を支給してくれます。
外部サイト:母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について |厚生労働省
各種奨学金
子供が大きくなってきて義務教育が終わると、高校や大学などに多くの費用が掛かるようになります。
子育てのなかでも一番お金が掛かる時期です。そこで利用したいのが奨学金制度。
教育改革のひとつとして、平成29年度から無利子で借りれる対象者が広がり、給付型(返済不要)の奨学金も実施されるようになりました。
・日本学生支援機構 (JASSO)
大学院・大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)の学生を対象とした、奨学金の貸与や留学支援、留学生の受入支援などをおこなっている、国の独立行政法人です。
貸与奨学金には無利息(第一種)と利息付(第二種)があり、世帯年収や成績基準の条件があります。
また連帯保証人および保証人が必要です。
この連帯保証人とは、利用者本人と同じ返済の義務を負い、原則は父母(保護者)が受けます。そして、本人や連帯保証人が返還できなくなった場合には、保証人が返済を担うことになります。
連帯保証人や保証人を用意できない場合は保証機関を利用することになり、その場合は保証料を毎月の貸与金額から一定額が差し引かれます。
2017年度より、住民税が非課税の世帯の生徒については、生徒の学力基準に関わりなく、希望者全員が貸与を受けられるようになりました。
また同じく2017年度より、給付型奨学金制度(返済不要の奨学金)が実施されるようになりました。
外部サイト:日本学生支援機構 (JASSO)公式ホームページ
・社会福祉協議会
都道府県や政令指定都市、市町村ごとの行政区分ごとに組織された団体です。
地域福祉の推進を図ることを目的としており、民間団体なのですがその予算は自治体から出ており、行政とのつながりが深いので、普通の人には市役所の一部のように見えるかもしれません。
さまざまな福祉事業を行っており、低所得世帯などを対象に、就学等に必要な費用(教育支援資金)を「生活福祉資金」として無利子で貸し出しています。
外部サイト:社会福祉協議会公式サイト
・母子福祉資金/父子福祉資金
各市町村が実施している貸付金です。ひとり親世帯(母子・父子家庭)を対象に、生活が自立するための資金や、子供の教育資金を貸し出しています。市役所で相談できます。
・民間の無利子奨学金
民間でもさまざまな民間団体や企業が独自の奨学金制度を実施しています。
内容もそれぞれによって異なりますので、気になったところに相談をしてみたら良いでしょう。
例)日本教育公務員弘済会/味の素奨学会/吉原育英会/渋谷育英会/いっしん育英会/あしなが育英会/交通遺児育英会/全国商業高等学校協会/日本通運育英会/日本財団/日鉄鉱業奨学会/聖明福祉協会/東京弁護士会育英財団/みずほ育英会/東ソー奨学会/山口育英奨学会/樫の芽会/小貫基金/JID財団/毎日育英会…など
養育費について
2006年の政府の調査によりますと、養育費の支払いについては「現在も受けている19.0%」「過去に受けたことがある16.0%」「受けたことがない59.1%」とのことです。
離婚後、親権を失った配偶者にも未成年の子に対しては、養育義務があります。
また、民法には養育費の支払い義務がなくなることはない事が定められています。
単に無収入だとか負債があることを理由に養育費の支払いを拒否することは認められていません。
離婚して子供を引き取る場合は、元配偶者に養育費の支払いを求めることができます。
むしろ養育費を払うことは、親の義務ではないでしょうか。
民間の金融機関の利用
このように、母子家庭や父子家庭には、さまざまな手厚い優遇の仕組みが用意されています。
まずはひとりで悩まないで、市役所に相談してください。
民生委員や児童委員などの担当者がいろんなアドバイスをしてくれることと思います。
でも、こうしたサポートを受けたとしても、急な出費など、どうしてもお金が必要になることがあると思います。
そうした場合は、一般の銀行や信用金庫、消費者向けの金融業者を利用するという方法もあります。
一般の銀行や信用金庫では、不動産や自動車などの目的別ローンのほか、使い道が自由に決められるフリーローンも流行りです。
金利は例えば年3.6~10.0%と、金融会社よりも安いです。
一方、CMなどでよく見かける金融会社は、銀行の審査が通らなかったような方でも通る可能性がありますし、審査から契約、そして入金までが即日でできてしまうことをセールスポイントにしているところもあります。
2006年の貸金業法の改正により、金利の上限が20%に引き下げられるなど、個人が安心して借りられる仕組みが整ったほか、初回の利息を無料にしてくれたり、女性専用のサービスを用意しているところもあります。
銀行系では求められることの多い担保や保証する人も不要な場合が多いです。もちろん、個人の情報もしっかりと守ってくれます。
いろんなところに相談してみてください。誰かがきっと救いの手を差し伸べてくれることでしょう。話をしてみるだけでも、けっこう気持ちが楽になるものですよ。