料理の原価率が30%と聞くと、残りの70%が店のもうけのように感じるかもしれません。実際には、そこから店で働く人の給料や家賃、電気やガスの代金などを払う必要があります。この記事では、1,000円の料理を入口にして、原価率という数字で何がわかり、何がわからないのかを整理します。後半では、日本政策金融公庫の経営指標と、日高屋を運営するハイデイ日高の決算を使って、実際の数字も確かめます。
- 原価率は、売上に対する原価の割合。料理の話では食材費、決算書では売上原価を指すことが多く、同じ数字とは限らない
- 1,000円の料理で食材費が300円でも、残りの700円は利益ではない。人件費や家賃などを払った残りが利益になる
- 公的な調査では、飲食店の売上原価の割合は料理の種類によって大きく違い、「30%が正解」という数字はない
01 原価率とは?
原価率は、売上に対して原価がどれだけの割合かを示す数字です。
- 原価率 = 原価 ÷ 売上 × 100
ただし、「原価」に何を含めるかで意味が変わります。ここが最初の大事なポイントです。
- 料理の原価率:1皿の値段に対する食材費の割合。メニューの値段を考えるときなどに使われる
- 決算書の売上原価率:会社の売上高に対する売上原価の割合。売上原価に何が入るかは会社によって違う
この記事では、2つを混ぜないように、料理1皿の話は「食材費」、決算の話は「売上原価」と呼び分けます。
02 1,000円の料理で原価が300円なら、700円は利益?
ここからは仮の計算です。税抜きの値段が1,000円の料理があり、食材費が300円だとします。
- 食材費の割合:300 ÷ 1,000 = 30%
- 食材費を引いた残り:1,000 − 300 = 700円
この700円は、店の利益ではありません。店を開けておくには、料理を作る人や接客する人の給料がかかります。店の家賃、電気・ガス・水道の代金、食器や調理機器の費用も必要です。700円は、そうした費用をまかなうための元手で、全部を払い終えたあとに残った分が、ようやく利益になります。
決算書の言葉でいうと、売上から売上原価を引いた残りは「売上総利益(粗利)」です。そこから人件費や家賃などの経費を引いたものが「営業利益」になります。粗利の考え方は粗利とは、利益の種類は5つの利益の違いで紹介しています。
03 食材費のほかに何がかかる?
実際の会社で確かめてみます。「日高屋」などを運営するハイデイ日高の、2026年2月期の決算です。売上高は622億円、期末の直営店舗数は472店舗でした。
決算短信で売上原価の中身を見ると、「店舗食材」の棚卸高と仕入高、自社工場で作った食材の製造原価でできています。売上原価は、ほぼ店で使う食材の費用だと読める作りです。
これを、売上高1,000円あたりに直したのが次の表です。数字は四捨五入しています。
| 項目 | 売上1,000円あたり |
|---|---|
| 売上原価(店舗食材) | 308円 |
| 人件費(給与手当・賞与など) | 303円 |
| 賃借料(家賃など) | 81円 |
| 水道光熱費 | 47円 |
| 減価償却費 | 23円 |
| その他の販管費 | 132円 |
| 営業利益 | 106円 |
売上原価と同じくらいの重さで、人件費がかかっていることがわかります。人件費から減価償却費、その他までを合わせた販売費及び一般管理費(販管費)は586円で、売上原価の2倍近くになります。決算短信も、販管費は売上高の58.6%だったと書いています。
なお、この会社にはFC店もあり、決算は直営店とFC店を分けて示していません。FC店がある会社の数字の読み方はコンビニの儲けの仕組みでも紹介しています。表は会社全体の数字を売上1,000円あたりに縮めたもので、1皿の料理の内訳ではありません。
04 飲食店の原価率は本当に30%が目安?
「飲食店の原価率は30%」という話を聞くことがあります。公的な調査で確かめると、そう単純ではありません。
日本政策金融公庫は、融資した従業者50人未満の法人企業の決算をもとに、業種ごとの経営指標をまとめています。2025年度調査で「食堂,レストラン」347社の売上高総利益率は、平均64.8%でした。売上高総利益率は売上高から売上原価を引いた割合なので、売上原価の割合は平均で35.2%になります。
料理の種類ごとに見ると、幅があります。
| 業種 | 調査対象数 | 売上原価の割合(平均) |
|---|---|---|
| 喫茶店 | 35社 | 28.1% |
| カレー料理店 | 33社 | 30.0% |
| そば・うどん店 | 26社 | 30.6% |
| 西洋料理店 | 66社 | 34.0% |
| 中華料理店 | 109社 | 35.0% |
| 日本料理店 | 74社 | 38.0% |
| すし店 | 37社 | 41.1% |
この7業種だけでも、28.1%〜41.1%と開きがあります。ただし、読み方には注意が必要です。公庫は、この調査は融資先が対象で、業界全体の実態を必ずしも表すものではないとしています。平均は各社の比率をそのまま平均した単純平均です。また、ここでの売上原価は決算書の数字で、料理1皿の食材費の割合と同じものではありません。
「30%が目安」という一つの数字で、どの店にも当てはまる正解はない、というのが資料からわかることです。
05 原価率・粗利率・営業利益率はどう違う?
3つの数字は、売上のうちどこまでを引いた残りを見るかが違います。
| 数字 | 計算 | わかること |
|---|---|---|
| 原価率 | 売上原価 ÷ 売上高 | 売上のうち原価に回った割合 |
| 粗利率 | (売上高 − 売上原価)÷ 売上高 | 原価を引いて残った割合 |
| 営業利益率 | 営業利益 ÷ 売上高 | 人件費や家賃なども引いて、本業で残った割合 |
粗利率は、公庫の調査では売上高総利益率と呼ばれています。原価率と粗利率は、足すと100%になる関係です。ハイデイ日高なら原価率30.8%で、粗利率はおよそ69%です。一方、営業利益率は、販管費を引いたあとの数字なので、ずっと小さくなります。
公庫の調査では、食堂・レストランの売上高営業利益率は平均−2.0%、中央値でも−0.2%でした。人件費の割合は平均33.0%、人件費以外の諸経費の割合は平均30.7%です。売上原価の割合が35%前後でも、営業利益がほとんど残らない会社が多いことがうかがえます。これらの平均は別々に計算された数字なので、足したり引いたりして合計を出すことはできません。
06 原価率が低ければ店は儲かる?
原価率が低いだけで、店が儲かるとは限りません。
公庫の表を見ると、喫茶店は売上原価の割合が低い一方、すし店は高めです。しかし、どちらも営業利益率の平均はマイナスでした。原価が少なくても、人件費や家賃が重ければ利益は残りません。反対に、原価率がやや高くても、お客さんが多く、店の経費を売上でまかなえれば利益は出ます。
ハイデイ日高は、原価率が前の年の29.7%から30.8%に上がりました。それでも営業利益は19.4%増えました。販管費の割合が60.4%から58.6%に下がり、原価率の上昇を上回ったからです。決算短信は、売上が伸びたことで人件費や水道光熱費などの上昇を吸収できたと説明しています。原価率だけを見ても、利益の動きはわかりません。
07 食材の値上がりや廃棄はどう影響する?
食材の値段が上がると、原価率は上がります。ハイデイ日高の決算短信は、原価率が30.8%に上がった背景として、米や豚肉、卵、お酒などの仕入れ値の上昇を挙げています。
捨てた食材も費用になります。決算の売上原価は、期首にあった在庫に、その年の仕入れなどを足し、期末に残った在庫を引いて計算します。使い切れずに捨てた食材は期末の在庫に残らないので、そのまま売上原価に含まれます。売れなかった分の食材費も、売れた料理の売上でまかなう必要があるわけです。
もう一つ、決算の売上原価には、食材そのもの以外が入ることもあります。ハイデイ日高の場合、自社工場で作った食材の製造原価の内訳は、材料費が73.5%で、残りは工場の労務費や経費です。売上原価全体で見ると、工場の労務費と経費は約7%にあたります。決算書の原価率と、店の人が計算する食材費の割合が一致しないのは、こうした違いがあるからです。
08 よくある質問
原価率と粗利率を足すと100%になる?
なります。粗利(売上総利益)は売上高から売上原価を引いたものなので、原価率と粗利率を足すと100%です。
決算書を見れば、料理1皿の原価率がわかる?
わかりません。決算書の売上原価は会社全体の数字で、メニューごとの内訳は出ていません。工場の人件費などが入っていることもあります。決算書のどこを見ればよいかは決算の読み方で紹介しています。
- 原価率は売上に対する原価の割合。料理の食材費の割合と、決算書の売上原価率は同じとは限らない
- 1,000円の料理で食材費300円なら、残りは700円。ここから人件費や家賃などを払った残りが利益になる
- ハイデイ日高の決算を売上1,000円あたりにすると、売上原価308円・人件費303円・家賃81円で、営業利益は106円
- 公庫の調査では、飲食店の売上原価の割合は料理の種類で28.1%〜41.1%と幅があり、「30%が正解」という数字はない

