セリアの決算を売上100円あたりに直すと、粗利は41.7円ありました。ところが、最後に残る当期純利益は5.7円です。その間に何が引かれているのでしょうか。損益計算書には、性格の違う利益が5つ、上から順に並んでいます。1段ずつ下りながら、どこで何が引かれたかを追います。
- 5つの利益は、売上から「原価」「販管費」「営業外と特別の損益」「税金」を順に足し引きした途中の数字
- 本業で稼いだ力は営業利益、最後の結果は当期純利益。見る利益によって、会社の姿は違って見える
- 営業利益が黒字でも、その下の段階で赤字になることがある。逆に、営業利益が赤字でも経常利益が黒字になることもある
01 5つの利益は、何が違う?
5つの利益は、売上高から何を引いたかで名前が変わります。損益計算書の上から順に並べると、次のとおりです。
| 利益 | 求め方 |
|---|---|
| 売上総利益 | 売上高 − 売上原価 |
| 営業利益 | 売上総利益 − 販売費及び一般管理費 |
| 経常利益 | 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用 |
| 税引前当期純利益 | 経常利益 + 特別利益 − 特別損失 |
| 当期純利益 | 税引前当期純利益 − 法人税などの税金 |
並べ方は、財務諸表等規則という決まりに沿っています。上から下へ進むにつれて、商品の原価や本業の経費に加え、営業外の損益、特別損益、税金まで順番に反映されていきます。
02 売上総利益(粗利)とは?
売上高から売上原価を引いた利益で、ふだんは粗利と呼ばれます。商品を売った時点で、いくら残ったかを示す数字です。セリアの売上100円あたりでは41.7円でした。
粗利の計算や、値引きしたときの変わり方は粗利とはでくわしく紹介しています。
03 営業利益とは?
売上総利益から、販売費及び一般管理費(販管費)を引いた利益です。販管費には、商品を売るための費用と、会社を動かすための費用が入ります。財務諸表等規則では、販売と一般管理の業務で生じたすべての費用、とされています。
セリアでは、粗利41.7円から販管費33.5円を引いて、営業利益は8.2円でした。店で働く人の給料や店の家賃は、ここで引かれます。本業でどれだけ稼げたかを見るときの中心になる数字です。
04 経常利益とは?
営業利益に、本業以外の収入(営業外収益)を足し、本業以外の費用(営業外費用)を引いた利益です。営業外収益の例として、財務諸表等規則は受取利息や受取配当金などを挙げています。
セリアでは、営業外の収入と費用を反映しても、売上100円あたり8.2円が8.3円になる程度でした。ライフ(連結)の営業外収益は約16億円でした。中身を見ると、受取利息や受取配当金のほかに、データ提供料やリサイクル収入も並んでいます。会社によって、本業の外で入ってくるお金の種類はさまざまです。
05 税引前当期純利益とは?
経常利益に特別利益を足し、特別損失を引いた利益です。財務諸表等規則は、特別利益の例に固定資産売却益を、特別損失の例に減損損失や災害による損失を挙げています。
セリアでは特別損失が売上100円あたり0.2円ほどで、税引前当期純利益は8.1円でした。ライフ(連結)では、投資有価証券売却益など約23億円の特別利益がありました。一方で、減損損失約45億円を含む約47億円の特別損失も出ています。ライフの連結の損益計算書では、この段階の利益を「税金等調整前当期純利益」と書いています。
06 当期純利益とは?
税引前当期純利益から、法人税、住民税及び事業税などの税金を引いた、最終的な利益です。セリアでは、税金にあたる部分が売上100円あたり2.4円で、当期純利益は5.7円でした。
ライフの連結の損益計算書では、当期純利益の下に「親会社株主に帰属する当期純利益」という行が続きます。金額はどちらも18,822百万円でした。ライフの決算短信の1ページ目に載っているのは、この「親会社株主に帰属する当期純利益」のほうです。
当期純利益は会計上の利益で、その分だけ現金が増えたという意味ではありません。利益と現金の違いは決算の読み方のキャッシュ・フローの節で紹介しています。
07 5つの利益を売上100円で比べると?
セリアの5つの利益を、売上100円あたりで並べます。右の列は、1つ上の利益から何が足し引きされたかです。
| 利益 | 売上100円あたり | 前の段階からの足し引き |
|---|---|---|
| 売上総利益 | 41.7円 | 売上原価58.3円を引く |
| 営業利益 | 8.2円 | 販管費33.5円を引く |
| 経常利益 | 8.3円 | 営業外の収益と費用の差し引きで0.1円ほど増える |
| 税引前当期純利益 | 8.1円 | 特別損失0.2円ほどを引く |
| 当期純利益 | 5.7円 | 税金2.4円を引く |
いちばん大きく減るのは、粗利から営業利益への段階です。売上100円がどこへ行ったかを1本の帯にすると、次のようになります。
注:営業外損益と特別損益を合わせると、利益が売上100円あたり約0.1円減りました。図は小数第1位に四捨五入した概算で、5つを足すと100.0円です。
08 黒字と赤字が混ざることはある?
あります。財務諸表等規則では、どの段階にも「利益」と「損失」の両方の名前が用意されています。営業損失、経常損失、税引前当期純損失、当期純損失と書き分けます。説明用に、2つの仮の会社で考えてみます。単位は百万円です。計算を簡単にして、表に書いていない収益や費用はないものとします。
| 会社 | 営業利益 | 足し引き | その下の利益 |
|---|---|---|---|
| A社 | 30 | 特別損失50を引く | 税引前 −20 |
| B社 | −10 | 営業外収益25を足す | 経常利益 15 |
A社は本業で黒字ですが、大きな特別損失で税引前の段階から赤字になります。B社は本業が赤字でも、本業以外の収入で経常利益は黒字です。どちらも「黒字か赤字か」は、どの利益を見るかで答えが変わります。
実際の決算でも、段階によって動きが違うことはよくあります。ライフ(連結)を前の年と比べると、次のとおりです。
| 利益 | 前の年 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 経常利益 | 約262億円 | 約271億円 |
| 税金等調整前当期純利益 | 約260億円 | 約247億円 |
| 当期純利益 | 約179億円 | 約188億円 |
経常利益は増えましたが、減損損失などの特別損失で、税金等調整前当期純利益は減りました。それでも当期純利益は、また増えています。税金にあたる費用の割合が、前の年の約31%から約24%に下がっていました。この年は「法人税等調整額」が約50億円のマイナスで、損益計算書の税金の費用を小さくする向きに働いています。法人税等調整額がマイナスだった分、税金等調整前当期純利益が減っても、当期純利益は増えました。
ただし、法人税等調整額は会計上の調整額です。その金額の税金が、そのまま払い戻されたわけではありません。
09 どの利益を見ればいい?
知りたいことによって変わります。目安として、次のように使い分けられます。
- 商品の売り方で、どれだけ残るか:売上総利益(粗利)
- 本業で、どれだけ稼げたか:営業利益
- 利息や配当なども含めた、ふだんの稼ぎ:経常利益
- 税金の影響を除いて、特別損益まで含めた結果:税引前当期純利益
- 税金まで含めて、最後にいくら残ったか:当期純利益
1つの利益だけで判断せず、上から順に並べて、どの段階で大きく増えたり減ったりしたかを見るのが基本です。その動きを売上100円あたりに直す手順は、決算の読み方にまとめています。
10 よくある質問
法人税等調整額とは?
税効果会計という会計のルールを当てはめたときに出る、税金の調整額です。財務諸表等規則でも、この名前で、税引前当期純利益の下に書くとされています。プラスにもマイナスにもなるので、税金にあたる額が年によって大きく変わることがあります。
100均の利益の内訳は?
セリアの販管費を、給料や家賃などに分けた例は100均はなぜ儲かる?で紹介しています。
- 5つの利益は、売上から原価・販管費・営業外と特別の損益・税金を順に足し引きした途中の数字
- セリアの売上100円あたりでは、粗利41.7円→営業利益8.2円→経常利益8.3円→税引前8.1円→当期純利益5.7円。いちばん大きく減るのは販管費の段階
- 営業利益が黒字でも下の段階で赤字になることも、営業利益が赤字でも経常利益が黒字になることもある。どの利益を見るかで答えが変わる
- 1つの利益だけでなく、上から順に並べて、どこで増減したかを見る

