スーパーのレジで100円を払ったとき、そのうち会社に利益として残るのはいくらでしょう。棚の値札からは見えませんが、決算書を売上100円あたりに直すと、答えの目安が分かります。この記事で取り上げるのは、マルエツやカスミ、いなげやなどを傘下にもつユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)です。直近の通期決算である2026年2月期(連結)の数字を使います。ここでいう100円は会社全体の1年間の平均で、商品1個の採算ではありません。
- USMHの2026年2月期(連結)では、売上100円のうち仕入れの費用が約71.4円で、粗利は約28.6円
- そこから人件費などの経費が約30.1円かかり、商品の売上とは別の営業収入約2.0円を足して、営業利益は約0.5円
- 業界の調査では、2024年度の売上高営業利益率の平均は1.38%。粗利率と営業利益率は、まったく別の数字
01 スーパーで100円売れたら、いくら残る?
答えから見ていきます。USMHの連結決算では、2026年2月期の売上高が約9,444億円でした。これを100円として、決算短信の連結損益計算書の各行を割ると、次のようになります。
| 項目 | 売上100円あたり |
|---|---|
| 売上原価(仕入れなど) | 約71.4円 |
| 売上総利益(粗利) | 約28.6円 |
| 販売費及び一般管理費 | 約30.1円 |
| 営業収入 | 約2.0円 |
| 営業利益 | 約0.5円 |
100円の売上で、本業の利益として残るのは約0.5円です。1万円の買い物に置き換えても、約53円にとどまります。
USMHは、マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東、いなげやを傘下にもつ会社で、期末の店舗数は665店舗でした。数字はこのグループ全体の合計を割ったものです。
02 粗利率と営業利益率は何が違う?
取り違えやすいのが、粗利率と営業利益率です。粗利は、売上から商品の仕入れなどにかかった売上原価を引いた額で、USMHでは売上の28.6%でした。営業利益は、その粗利から店を動かすための経費を引き、本業のほかの収入を足した額で、売上の0.5%です。
粗利率が28.6%と聞くと、100円で28円以上もうかるように感じます。実際には、その大半が人件費や店の費用に回ります。粗利の考え方は粗利とは、利益の段階の違いは5つの利益の違いで紹介しています。
03 粗利から何が引かれる?
粗利の約28.6円から引かれるのが、販売費及び一般管理費(販管費)の約30.1円です。USMHの決算参考資料では、販管費を4つの区分に分けて、売上高に対する割合を示しています。
| 区分 | 売上100円あたり |
|---|---|
| 人件費 | 約15.8円 |
| 設備費 | 約9.9円 |
| 販売費 | 約2.5円 |
| 一般費 | 約1.9円 |
| 合計 | 約30.1円 |
いちばん大きいのは人件費で、販管費の半分以上を占めます。設備費・販売費・一般費にどんな費用が入るのかまでは、参考資料に説明がありません。
会社は決算短信で、販管費が前の年の117.8%に増えたことについて、働く人にかかる費用や光熱費、物流費が上がったと説明しています。この年度は、粗利の金額も増えましたが、販管費はそれを上回る割合で増えました。その結果、営業利益は前の年より減りました。
04 営業収入とは?
先ほどの表で、粗利の約28.6円から販管費の約30.1円を引くと、約1.5円の不足になります。それでも営業利益が黒字なのは、商品の売上とは別に、約193億円の営業収入があるからです。売上100円あたりでは約2.0円にあたります。
営業収入の中身の内訳は、この記事で使った決算短信と決算参考資料には書かれていません。ここでは「商品の売上とは別に計上されている収入」とだけ書いておきます。食品スーパーのライフコーポレーションの決算でも、粗利だけでは経費をまかなえず、営業収入を足して営業利益が出る形でした(粗利とは)。
05 粗利率が0.4ポイント下がると?
USMHは決算短信で、加工食品を中心に価格施策や販促を強めた結果、売上総利益率が前の年より0.4ポイント下がったと説明しています。決算書の数字で計算すると、前期の粗利率は約28.96%、当期は約28.57%で、差は約0.39ポイントです。
0.39ポイントは小さな差に見えます。ところが売上高の約9,444億円に掛けると、約37億円になります。参考までに、同じ年度の営業利益は約50億円でした。
ただし、これは率の差の大きさを金額で示した参考の計算です。この年度は売上も販管費も前の年から変わっているので、営業利益が約37億円減ったという意味ではありません。売上の規模が大きい会社では、率のわずかな違いが大きな金額になる、ということです。
06 スーパー業界の平均は?
1社の数字だけでは、業界の中でどのあたりかが分かりません。業界の目安には、スーパーの業界団体がまとめた白書の2026年版を使います。発行は全国スーパーマーケット協会です。帝国データバンクのデータをもとに、2024年度決算の平均が載っています。
| 売上規模 | 粗利率の平均 | 営業利益率の平均 |
|---|---|---|
| 全体 | 26.46% | 1.38% |
| 30億円未満 | 26.18% | 0.18% |
| 30億〜100億円 | 26.08% | 0.71% |
| 100億〜300億円 | 26.35% | 1.32% |
| 300億〜1,000億円 | 26.81% | 2.02% |
| 1,000億円以上 | 27.00% | 3.09% |
粗利率の平均は、どの規模でも26%台から27%台です。一方、営業利益率の平均は0.18%から3.09%まで開きがあり、売上規模が大きいグループほど高くなっています。なぜ規模でこれだけ差が出るのかまでは、この表は説明していません。
この数字を読むときは、3つの点に注意が要ります。
- 対象は、帝国データバンクのデータベースと「食品スーパーマーケット年鑑」の両方に載っている企業で、全体は粗利率が309社、営業利益率が312社。日本のスーパー全体ではない
- 各社の率を足して社数で割った単純平均で、大きな会社も小さな会社も1社として数えている
- 年度は2024年度で、USMHの2026年2月期とは時期も集計のしかたも違う。並べて「平均より高い・低い」と比べられる数字ではない
07 100円ショップや飲食店と比べると?
このサイトでは、ほかの業種の決算も売上100円あたりに直してきました。会社も決算の年度も違うので目安にとどまりますが、並べると業種による違いが見えてきます。
- 100円ショップのセリア(2026年3月期・非連結):粗利は売上100円あたり41.7円
- 食品スーパーのライフコーポレーション(2026年2月期・連結):粗利は31.4円
- 飲食店チェーンのハイデイ日高(2026年2月期):営業利益は売上100円あたり約10.6円
スーパーは、扱う商品の多くが食品で、粗利が雑貨中心の100円ショップより小さい形です。飲食店の詳しい数字は飲食店の原価率で紹介しています。
08 最後に残る利益は?
ここまで見てきた約0.5円は、本業のもうけを表す営業利益です。決算書では、ここからさらに本業以外の収入や費用、その年だけの利益や損失、税金などを反映して、最後の損益が決まります。
最後の損益を見ると、USMHの2026年2月期は約32億円の赤字でした(親会社の株主に帰属する分)。営業利益が黒字でも、最後の損益まで黒字になるとは限りません。決算書のどの段階の数字を見ているのかを確かめることが、決算を読むときの基本です。決算書全体の読み方は決算の読み方で紹介しています。
09 よくある質問
スーパーの利益率は何%くらい?
どの利益で見るかで答えが変わります。白書の2024年度決算の平均では、粗利率が26.46%、営業利益率が1.38%でした。対象は年鑑に載っている企業で、業界全体の数字ではありません。
粗利率が30%なら、100円で30円もうかる?
もうかりません。粗利からは人件費や店の費用が引かれます。USMHでは粗利が約28.6円あっても、営業利益は約0.5円でした。
売上100円あたりの数字は、商品1個の採算?
いいえ。会社全体の1年間の売上と費用を割った平均です。値段の安い商品も高い商品も、特売の商品も含まれています。
- USMHの2026年2月期(連結)では、売上100円のうち粗利は約28.6円、販管費は約30.1円で、営業収入約2.0円を足して営業利益は約0.5円
- 販管費でいちばん大きいのは人件費で、売上100円あたり約15.8円
- 粗利率の0.39ポイントの違いも、売上が約9,444億円あれば約37億円の規模になる
- 白書の2024年度決算の平均は、粗利率26.46%・営業利益率1.38%。対象と集計方法がUSMHとは違うので、直接は比べない
- 営業利益が黒字でも、最後の損益まで黒字とは限らない

