コンビニのレジで100円を払ったとき、その100円はまず誰のお金になるのでしょうか。セブン‐イレブンやローソンの本部、と思いがちですが、フランチャイズの加盟店なら、まず店を営む加盟店の売上になります。この記事では、コンビニのフランチャイズ加盟店の売上高を100円と考えます。加盟店が商品を売って得る売上と、コンビニ本部が受け取る収入は、別のものです。
まず公正取引委員会の2020年の調査で、加盟店側の収支を見ます。次に、セブン‐イレブン・ジャパンの2026年2月期の決算で、本部側の収入を確かめます。2つは調査の時期も対象も違うので、一つの店の収支として足し合わせることはしません。
- 加盟店で払った100円は、まず加盟店の売上。本部の売上になるのは、そこから加盟店が払うチャージ(ロイヤルティ)など
- 公正取引委員会の2020年調査を売上100円あたりに直した参考値では、原価が約69.3円、本部へのロイヤルティが約15.5円。従業員の給料は約8.1円(項目別の中央値)
- 大手が採用する計算方法では、チャージは売上ではなく粗利をもとに決まり、売れ残りの廃棄ロスは加盟店側の費用になる
01 コンビニで100円の買い物をしたら、誰の売上になる?
答えは、その店が直営店か加盟店かで変わります。本部が自分で営む直営店なら、本部の売上です。一方、本部と契約した加盟店なら、加盟店の売上になります。
加盟店は、本部の看板を借りて店を営む独立した事業者です。公正取引委員会の報告書では、商品を仕入れる契約は、加盟店が直接メーカーや商社と結ぶ形です。雑誌や本などを除けば、売れ残っても返品できない買切りです。店に並ぶおにぎりも、加盟店が仕入れて売っている商品ということになります。
02 コンビニの加盟店と本部は何が違う?
本部は、看板と仕組みを貸す側です。加盟店が本部に払うお金を、公正取引委員会はロイヤルティと呼んでいます。看板(商標)を使う料金に、本部の経営指導やマーケティング、システムの利用料などをまとめた対価です。呼び名はチャージやフィーなど、チェーンによって違います。
つまり、お金の流れは2段になっています。お客さんの100円は加盟店の売上になり、加盟店はその中から仕入れの代金や給料を払い、本部にチャージを払います。本部の売上として計上されるのは、このチャージの部分です。売上の数え方がどう違うかは、決算の読み方とあわせて見るとわかりやすくなります。
03 加盟店の売上100円はどこへ行く?
加盟店側の数字は、公正取引委員会が2020年9月に公表した調査が手がかりになります。8チェーンの加盟店にアンケートをし、12,093店から回答を得ています。その中に、1店舗の年間の収支を項目ごとにまとめた表があります。売上高の中央値は1億8600万円でした。
この表の各項目を売上高で割り、売上100円あたりに直しました。
| 加盟店の収支を売上100円あたりに換算した参考値(2020年調査・項目別中央値) | 売上100円あたり |
|---|---|
| 売上原価 | 69.3円 |
| 本部へのロイヤルティ | 15.5円 |
| 従業員給与 | 8.1円 |
| 廃棄ロス | 2.5円 |
| 棚卸ロス | 0.1円 |
| 水道光熱費 | 0.4円 |
| その他営業費 | 1.3円 |
| 上記以外の営業費 | 0.5円 |
| 本部からの補助金 | +0.8円 |
| 差引額(参考計算値) | 約3.2円 |
もとの金額は、売上原価が1億2887万円、ロイヤルティが2888万円です。従業員給与は1500万円、廃棄ロスは468万円でした。本部からの補助金は150万円の収入として足されています。
読むときに大事な前提が3つあります。
- 報告書は、項目ごとに別々に中央値を出している。それぞれの値は別の店から来ている可能性があり、組み合わせた結果が、実在するどれか1店舗の収支を表すとは限らない
- 最後の586万円は、報告書が項目別の中央値から計算した差引額。オーナー一人ひとりの所得の中央値でも、手取りでもない
- 複数のチェーンをひとまとめにした数字なので、チェーンごとに見れば違う結果になることもある。消費税込みか税抜きかは、報告書のこの表では確かめられない
この前提をふまえても、見えてくることはあります。売上100円のうち、原価と本部へのロイヤルティだけで約85円です。差引額として残るのは約3.2円。売上の大きさに比べて、残る額はかなり小さい構造です。なお、この表では廃棄ロスと棚卸ロスを売上原価に含めず、別の費用として答えるよう頼んでいます。
04 本部へのチャージはどう決まる?
チャージの計算方法は、チェーンによって違います。公正取引委員会が調べた8チェーンでは、4つの算定式等が使われていました。
| 方式 | 中身 |
|---|---|
| 売上高×一定率 | 売上の金額に率を掛ける |
| 売上総利益×一定率 | 粗利に率を掛ける |
| 売れた分の原価で計算した粗利×一定率 | いわゆるコンビニ会計 |
| 固定額 | 売上に関係なく決まった額 |
大手が使っているのは、表の3つ目の方式です。実際に売れた商品の原価だけを引いて粗利を出し、それに率を掛けます。つまり、大手のチャージは売上の何%と決まるのではなく、粗利をもとに決まります。粗利の計算のしかたは粗利とはで紹介しています。
率は、契約の種類によっても変わります。報告書によると、店の建物を建てたり維持したりする費用を本部が持つ契約ほど、ロイヤルティは高めになります。オーナーが持つなら、低めになります。同じチェーンでも、店によってチャージの率が違うことがあるわけです。
05 売れ残りや廃棄ロスは誰が負担する?
ここが、コンビニの儲けの仕組みで見落としやすいところです。説明用に、仮の例で考えます。
同じ商品を100円で仕入れ、150円で売る店があるとします。2個仕入れて、1個は売れ、もう1個は売れ残って廃棄しました。仕入れの代金は合わせて200円、売上は150円です。
| 粗利の計算のしかた | 粗利 |
|---|---|
| 仕入れた2個分の原価200円を引く | −50円 |
| 売れた1個分の原価100円だけを引く(コンビニ会計) | 50円 |
コンビニ会計では、売れた1個だけで粗利を計算するので、粗利は50円になります。チャージはこの50円をもとに計算されます。一方、廃棄した1個の仕入れ代金100円は、粗利の計算の外に置かれ、加盟店の費用として残ります。公正取引委員会の報告書でも、この方式では廃棄ロスや棚卸ロスは売上原価に含まれない、と整理されています。
本部側の考え方も紹介しておきます。報告書が引く本部の説明は2点です。1つは、売れた商品の原価だけで粗利を出すほうが筋が通るという点。もう1つは、店ごとに違う廃棄ロスを原価に入れると、加盟者間の公平が保てないという点です。
ただし、負担のしかたはチェーンや契約によって違います。報告書によれば、本部によっては廃棄ロスの一部を負担する制度もあり、15%を負担する例が挙げられています。2020年調査の表では、廃棄ロスが売上100円あたり約2.5円ありました。差引額の約3.2円と比べると、売れ残りが手元に残る額に響く大きさがわかります。
06 セブン‐イレブン本部は、加盟店の売上100円あたりいくら受け取る?
ここからは、本部側の数字です。セブン&アイ・ホールディングスの2026年2月期の決算短信を見ます。セブン‐イレブン・ジャパンの加盟店からの収入と、その対象になった加盟店の売上高が載っています。
- 加盟店からの収入:約8289億円
- その収入の対象となる加盟店売上高:約5兆4199億円
割ると、加盟店の売上100円あたり、本部が受け取った収入は約15.3円です。決算短信は、本部が加盟店からのチャージ収入を営業収入として計上していると説明しています。店で払われたお金のうち、本部の売上として数えられるのは、この部分だということです。
この15.3円は、決算の集計値から計算した比率です。セブン‐イレブンのすべての加盟店に、売上100円につき一律15.3円のチャージがかかる、という意味ではありません。公正取引委員会の約15.5円と数字は近いものの、比べることはできません。対象のチェーンも年度も、数字の集め方も違うからです。
07 本部の収入は、そのまま利益になる?
なりません。本部にも費用がかかります。同じ年度の決算説明資料によると、セブン‐イレブン・ジャパンの販管費は6344億円でした。その内訳には、地代家賃が2043億円、人件費が793億円、水道光熱費が653億円などがあります。
地代家賃の大きさは、本部が店舗の土地や建物を借りる契約があることを映しています。先ほど見たように、本部が店舗の費用を負担する契約ではチャージの率が高くなる、という関係とつながっています。
同じ年度のセブン‐イレブン・ジャパンの営業利益は2202億円でした。自営店と加盟店の売上を合わせたチェーン全店売上は約5兆4693億円です。チェーン全体の売上の大きさと、本部の利益の大きさは、まったく別の数字だということがわかります。売上から利益までの段階は、5つの利益の違いで紹介しています。
08 コンビニが儲かるかは何で変わる?
加盟店の側では、売上・原価・チャージ・給料・廃棄ロスのどれが動いても、手元に残る額が変わります。公正取引委員会の調査では、直近と5会計年度前を比べています。売上高の中央値は745万円減り、従業員給与は83万円増えていました。報告書が計算した差引額は、778万円から586万円へと192万円小さくなっています。報告書自身も、売上の減少と給料の増加などで加盟店の収支が厳しくなっていた、とまとめています。
本部の側では、加盟店の粗利が増えれば、それをもとにしたチャージも増えます。公正取引委員会によると、営業収入に占める加盟店ロイヤルティの割合は、上位3本部では大半を占めていました。加盟店の売上と粗利が、本部の収入の土台になっている構造です。
同じ「コンビニの儲け」でも、加盟店の儲けと本部の儲けは、別の計算で決まっています。どちらの話をしているのかを分けて考えると、ニュースの数字も読みやすくなります。
09 よくある質問
コンビニの平均日販とは?
1店舗が1日に売り上げる金額の平均です。公正取引委員会の報告書は、2017年度のコンビニの平均日販を52.5万円としています。1日の売上を見るこの数字も、加盟店の売上であって、本部の売上ではありません。
100均の儲けの仕組みとはどう違う?
100均の記事では、セリアの損益計算書を売上100円あたりに直しました。セリアは店の大半が直営店なので、店の売上の多くがそのまま会社の売上として計上されます。加盟店の売上と本部の収入が分かれるコンビニとは、そこが違います。くわしくは100均はなぜ儲かる?にあります。
- コンビニの加盟店で払った100円は、まず加盟店の売上。本部の売上として計上されるのは、加盟店から受け取るチャージなどの収入
- 公正取引委員会2020年調査の参考値では、売上100円あたり原価約69.3円、ロイヤルティ約15.5円。給料は約8.1円、廃棄ロスは約2.5円。項目別中央値の組み合わせで、実在の1店舗の収支ではない
- 大手のチャージは、売れた分の原価で計算した粗利に率を掛ける方式。廃棄した商品の原価は加盟店の費用になる(一部を本部が負担する制度もある)
- セブン‐イレブン・ジャパンの2026年2月期は、加盟店の売上100円あたり本部の収入が約15.3円。個々の契約の料率ではなく、収入がそのまま利益になるわけでもない

