「利益率」は、売上などの金額に対して、利益がどれだけの割合になるかを表す数字です。決算のニュースでは「営業利益率は○%」のように出てきます。この記事では、売上高で割る利益率を中心に、計算のしかたと、数字を読むときに取り違えやすい点を整理します。例には、東京証券取引所が上場会社の決算をまとめた2026年3月期の集計を使います。
- 利益率は「利益 ÷ 売上高」。どの利益で割るかで、売上高総利益率・営業利益率・経常利益率・当期純利益率の4つがある
- 前の年との差は「ポイント」で表す。利益の額が何%増えたかとは別の数字
- 東証の集計は、全社の数字を合計してから割っている。1社ずつの率を平均すると、結果が変わる
01 利益率とは?
利益率は、利益をある金額で割って、割合にしたものです。式にすると次のとおりです。
利益率(%)= 利益 ÷ 基準の金額 × 100
基準の金額として多いのが売上高です。売上高に対する利益率は、売上100円のうち何円が利益として残ったかと言い換えられます。営業利益率が5%なら、売上100円あたりの営業利益は5円です。決算書を売上100円に直して読む手順は、決算の読み方で紹介しています。
02 売上高で割る利益率は何種類ある?
決算書の損益計算書には、段階の違う利益がいくつも並んでいます。どの利益を売上高で割るかで、利益率の名前が変わります。代表的なのは次の4つです。
| 利益率 | 計算 | 使う利益 |
|---|---|---|
| 売上高総利益率(粗利率) | 売上総利益 ÷ 売上高 | 原価を引いた差額 |
| 売上高営業利益率 | 営業利益 ÷ 売上高 | 本業の利益 |
| 売上高経常利益率 | 経常利益 ÷ 売上高 | 利息など本業以外も含めた利益 |
| 売上高当期純利益率 | 当期純利益 ÷ 売上高 | 税金などを差し引いた利益 |
連結決算では、当期純利益と「親会社株主に帰属する当期純利益」を区別する場合があります。この記事の東証集計による計算では、後者を使います。
東証の集計方法の説明では、売上高営業利益率を「営業利益/売上高」と書いています。ほかの3つも、利益を売上高で割る同じ形の計算です。
単に「利益率」と書かれているときは、どの利益で割った数字かを先に確かめます。同じ会社でも、使う利益が違えば数字は大きく変わります。それぞれの利益の中身は5つの利益の違い、粗利率の計算は粗利とはで紹介しています。
03 上場会社の合計で計算すると?
東京証券取引所は、上場会社が発表した決算短信の数字を集計して公表しています(上場会社については上場とは)。2026年3月期の集計では、金融業を除いた全産業の対象が1,982社です。この1,982社の売上高と営業利益を合計すると、次のようになります。
| 項目 | 2026年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 約774兆円 | 約751兆円 |
| 営業利益 | 約52.9兆円 | 約52.8兆円 |
| 売上高営業利益率 | 6.84% | 7.02% |
営業利益の約52.9兆円を、売上高の約774兆円で割ると6.84%です。東証の表に載っている売上高営業利益率と同じ値になります。売上100円あたりに直すと、営業利益は約6.8円です。
前の年の数字は、比較可能会社ベースと注記されています。今期と比べられる会社でそろえた数字です。数字は2026年6月5日時点のものです。
同じ合計から、経常利益と、親会社株主に帰属する当期純利益も売上高で割ってみました。
| 利益率 | 2026年3月期 |
|---|---|
| 売上高経常利益率 | 約8.79% |
| 売上高親会社株主帰属利益率 | 約5.95% |
この2つは東証の表には載っていない、合計の数字からの計算です。また、国際会計基準(IFRS)を使う会社は、税引前利益を経常利益の欄に入れて集計されています。ここでの経常利益率は、日本の基準の経常利益だけを足したものではありません。
04 前の年との差はどう表す?
売上高営業利益率は、2025年3月期の7.02%から、2026年3月期は6.84%になりました。差は0.18ポイントです。
率どうしの差は、%ではなく「ポイント」で表します。「0.18%下がった」と書くと、別の意味にも読めます。7.02%の0.18%分、つまり約0.013ポイントだけ下がったという意味です。率の差を伝えるときは、ポイントを使うと取り違えが起きません。
05 利益が増えても利益率が下がるのはなぜ?
同じ集計で、前の年と比べた増え方も見てみます。
| 項目 | 前の年と比べた増加率 |
|---|---|
| 売上高 | 3.02% |
| 営業利益 | 0.34% |
営業利益の額は、前の年より増えています。それでも売上高営業利益率は7.02%から6.84%に下がりました。営業利益の増え方より、売上高の増え方が大きかったからです。
ここで、0.34%は営業利益の額が前の年から何%増えたかを表す数字です。7.02%と6.84%は、売上高に対する営業利益の割合です。どちらも%で書きますが、測っているものが違います。ニュースで「増益」と「利益率の低下」が同時に出てくるのは、このような場合です。
反対に、利益の額が減っても、売上高がそれ以上に減れば、利益率は上がります。利益率だけ、または利益の額だけを見ても、会社の数字の動きはつかめません。
06 業種で利益率は違う?
東証の集計には、業種ごとの売上高営業利益率も載っています。2026年3月期決算の対象上場企業の集計から、いくつかの業種を抜き出しました。
| 業種 | 集計社数 | 2026年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|
| 卸売業 | 193社 | 2.33% | 2.31% |
| 小売業 | 129社 | 5.54% | 5.60% |
| 建設業 | 101社 | 8.30% | 6.36% |
| 電気機器 | 163社 | 10.87% | 9.52% |
| 情報・通信業 | 225社 | 11.69% | 11.91% |
| 不動産業 | 55社 | 13.24% | 12.70% |
2026年3月期の金融業を除く29業種では、いちばん低いのが卸売業の2.33%でした。いちばん高いのは不動産業の13.24%です。業種によってなぜこれだけ違うのかは、この集計には書かれていません。
利益率を比べるときは、同じ業種の中で、同じ利益を使った率どうしを並べます。卸売業と不動産業では、利益率の水準が異なります。数字の高さだけで、会社の経営が優れているかどうかは判断できません。また、これは上場会社だけの集計で、日本の会社全体の数字ではありません。
07 平均の利益率はどう計算する?
東証の集計は、対象会社の売上高や営業利益をすべて合計してから、その合計で率を計算しています。1社ずつの率を出して平均したものではありません。
2つのやり方で結果がどう変わるか、架空の2社で比べてみます。
| 会社 | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| A社 | 100万円 | 10万円 | 10% |
| B社 | 900万円 | 45万円 | 5% |
| 1社ずつの率の平均 | — | — | 7.5% |
| 合計してから計算 | 1,000万円 | 55万円 | 5.5% |
1社ずつの率を平均すると、売上の小さいA社も大きいB社も同じ1社として数えるので、7.5%になります。合計してから計算すると、売上の大きいB社の数字が強く反映されて、5.5%です。
同じ「平均の利益率」でも、どちらのやり方で出したかで数字が変わります。スーパーの業界白書の平均は、1社ずつの率を足して社数で割るやり方でした(スーパーの利益率)。やり方の違う平均どうしは、そのままでは比べられません。
08 よくある質問
利益率は何%あれば高い?
1つの目安はありません。東証の集計でも、2026年3月期の売上高営業利益率は、業種によって2.33%から13.24%まで開きがあります。比べるなら、同じ業種で、同じ利益を使った率どうしです。
ROEも利益率ですか?
ROEは、自己資本に対してどれだけ利益を生んだかを見る指標です。この記事で扱う、売上高に対する利益率とは分母が違います。東証の集計では、親会社株主に帰属する当期純利益を、自己資本(期首と期末の平均)で割って計算しています。営業利益率が低い会社でも、ROEが高い場合があります。
利益率が上がれば、利益の額も増える?
そうとは限りません。売上高が大きく減れば、利益率が上がっても利益の額は減ることがあります。率と額は並べて見ます。
- 利益率は、利益を売上高などで割った割合。どの利益で割るかで、売上高に対する利益率は4つある
- 東証の2026年3月期の集計(金融業を除く1,982社)では、売上高営業利益率は6.84%
- 前の年の7.02%との差は0.18ポイント。営業利益は0.34%増えたが、売上高が3.02%増えて、率は下がった
- 業種別では、卸売業の2.33%から不動産業の13.24%まで開きがある
- 全社を合計してから割る平均と、1社ずつの率の平均では、数字が変わる

