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日本銀行とは?お札を発行する中央銀行の3つの役割と金融政策

編集:お金をめぐる編集部 公開 約13分で読めます
日本銀行とは?お札を発行する中央銀行の3つの役割と金融政策
目次
  1. 日本銀行とは?
  2. お札を作るのは日本銀行?
  3. 日本銀行の3つの役割
  4. 銀行の銀行とは?
  5. 政府の銀行とは?
  6. 金融政策とは?
  7. 日本銀行は政府から独立している?
  8. 日本銀行は自由にお金を発行できる?
  9. 日本銀行と普通の銀行は何が違う?
  10. よくある質問

日本銀行は、お札を印刷するところだと思われがちです。けれども、お札を刷っているのは国立印刷局です。日本銀行は、でき上がったお札を引き取って、世の中に送り出す側にいます。日本銀行は、日本の中央銀行です。お札を出すほかに、銀行どうしのお金のやり取りを支え、国のお金を預かり、金利を通じて物価の安定を目指しています。財布のお札や銀行の預金、ニュースで聞く金利が、日本銀行の仕事とどうつながっているのかを順に見ていきます。

  1. 日本銀行は日本の中央銀行。お札を刷るのは国立印刷局で、発行するのが日本銀行。硬貨は政府が発行する
  2. 仕事は「発券銀行」「銀行の銀行」「政府の銀行」の3つの呼び名で整理できる。目的は物価の安定と、金融システムの安定
  3. 金融政策を決める自主性は法律で尊重される一方、政府と連絡を密にする務めもある。政府からすっかり切り離された組織ではない

日本銀行とは?

日本銀行がどんな組織かは、日本銀行法の最初の2つの条文に集まっています。第1条が挙げる役目は、お札(銀行券)を出すことと、通貨と金融の調節、つまり世の中のお金の流れや金利に働きかけることです。

同じ第1条の第2項には、銀行などのあいだの決済がとどこおりなく進むようにして、信用秩序を保つことも書かれています。お金の受け払いや貸し借りを、みんなが安心してできる状態を守る役目です。

第2条は、その調節の理念を「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」としています。日本銀行は目的として物価の安定と金融システムの安定の2つを挙げていますが、その根拠がこの第1条と第2条です。

役所の一つ、というわけでもありません。日本銀行法にもとづいて作られた認可法人で、株式会社とも違います。

資本金を見ると、少し変わった姿が見えてきます。資本金は1億円で、55%を政府、45%を民間が出しています。法律の第8条は、政府の出資を5,500万円より少なくしてはいけないとしていて、1億円の55%がちょうどその額です。

日本銀行に出資した証しになる出資証券は、株と同じように東京証券取引所で売買されています。ところが、株主総会にあたる集まりはなく、出資者に議決権もありません。取引所で値段が付く点は株に近くても、経営に口を出す権利はない、という中身です。

役員や職員も、公務員ではありません。ただ、仕事の公共性が高いので、法律の上では「公務に従事する職員」とみなされます(第30条)。本店は東京の日本橋にあります。支店は国内だけで32か所あり、2026年3月末の時点で4,571人の職員が働いています。

お札を作るのは日本銀行?

お札は日本銀行のものという印象が強いですが、刷っているのは日本銀行ではありません。製造は国立印刷局の仕事です。1877年の国立銀行券から今の日本銀行券まで、紙づくりも印刷も、国立印刷局とその前身が手がけてきました。

お札ができ上がると、日本銀行が製造の代金を払って受け取ります。ただ、引き取った時点では、まだ「発行」ではありません。発行になるのは、銀行などが自分の当座預金からお金を下ろし、それをお札の形で受け取った瞬間です。日本銀行の中に積まれている新しいお札は、発行前のお札です。

硬貨は、作る組織も出す組織も違います。硬貨を発行するのは日本銀行ではなく政府で、作っているのは造幣局です。造幣局で作られた硬貨は日本銀行に渡され、その時点で発行されたことになります。世の中に出ていく道は、お札と同じく、銀行などの当座預金の引き出しです。

お札と硬貨では、一度の支払いで出せる枚数の扱いも違います。お札は、何枚でも支払いに出せます。日本銀行法第46条第2項が、お札を「法貨として無制限に通用する」ものと位置づけているからです。硬貨のほうは、同じ種類なら20枚まで、つまり額面の20倍までが法貨です。

お札を作る側のことは国立印刷局とは、硬貨を作る側のことは造幣局とはで紹介しています。日本銀行に戻ってきてからの流れは、お札の一生と硬貨の一生にあります。

日本銀行の3つの役割

日本銀行の仕事は数が多く見えますが、お金をやり取りする相手で分けると、見通しがよくなります。日本銀行の説明には、「発券銀行」「銀行の銀行」「政府の銀行」という呼び方が出てきます。

呼び名相手と、主な仕事
発券銀行世の中全体。日本で唯一お札を発行する。戻ってきたお札も確かめる
銀行の銀行銀行など。当座預金を預かり、銀行どうしの決済を受け持つ。いざというときは資金を貸す
政府の銀行国。税金や年金など、国のお金の受け払いを扱う。国債の事務も受け持つ

発券銀行の仕事は、お札を出して終わりではありません。戻ってきたお札の枚数を確かめ、偽物がないか、もう一度世の中に出せる状態かを見分けています。日本銀行はこのチェックを鑑査と呼んでいます。

3つのほかにも、金利を通じて景気や物価に働きかける金融政策や、財務大臣の指示を受けて行う為替介入の実務などがあります。表を見比べると、3つの役割はどれも「お金の通り道」を受け持つ仕事です。お札は私たちの財布へ、当座預金は銀行どうしへ、政府預金は国と私たちのあいだへ。違うのは、通る場所です。

銀行の銀行とは?

私たちが銀行に口座を持つのと同じように、銀行も日本銀行に口座を持っています。これが日本銀行当座預金で、日銀当座預金とも呼ばれます。

日本銀行に口座を開いているのは、主に金融機関などと国です。個人や一般の会社の預金は受け付けていません。私たちが日本銀行の窓口に行っても、口座は作れないということです。

日銀当座預金には、主に3つの役目があります。

  • 銀行どうしや、銀行と日本銀行・国との取引の支払いにあてる
  • 私たちが預金を引き出すときに渡す、現金の備えになる
  • 準備預金制度で預けることになっているお金(準備預金)の置き場所になる

身近な場面に置き換えてみます。別の銀行の口座へお金を振り込んだとき、銀行どうしの資金の決済は、日銀ネットで処理されます。日銀ネットは日本銀行が運営するシステムで、当座預金の間でお金を振り替えます。スマホの画面からは見えませんが、振込の裏側では日本銀行の口座が動いています。

もう一つ大事なのが、「最後の貸し手」としての役目です。一時的に資金が足りなくなった金融機関に、ほかに貸す先がないとき、日本銀行が一時的に資金を貸すことがあります。一つの金融機関のつまずきが、ほかの金融機関や金融の仕組み全体へ連鎖するのを防ぐ役目です。貸すときは、ふつうは国債などを担保に取ります(第33条)。

政府の銀行とは?

税金を納めるときや年金を受け取るとき、お金の相手は国です。こうした国のお金を国庫金といい、その受け払いを扱っているのが日本銀行です。

国は、受け入れた税金などを日本銀行の口座に預けています。これが政府預金で、日本銀行は国庫金の出入りを、この口座で集計し、記録しています。日本銀行法も第35条で、日本銀行が国庫金を扱うことを書いています。

といっても、税金を払いに日本銀行まで出向く必要はありません。国庫金の受け払いの大半は、各地の金融機関の窓口で済ませられます。国のお金を日本銀行が預金として預かり、一手に扱う今のやり方は、1922年に始まりました。国債を発行するときの事務や、元本・利息の支払いの事務も、日本銀行が受け持っています。

ここには、はっきりした線引きもあります。日本銀行が国にお金を貸したり、国債を直接引き受けたりすることは、財政法第5条で原則として禁止されています。中央銀行が国にお金を出し始めると、国の財政に歯止めがかかりにくくなります。その結果、お札が出回りすぎて激しいインフレを招くおそれがある、と日本銀行は説明しています。物価が上がり続けるとどうなるかは、インフレとはで紹介しています。

金融政策とは?

金融政策は、ニュースでよく聞くわりに、中身が見えにくい仕事です。日本銀行の説明では、中央銀行が行う通貨と金融の調節のことを、金融政策と呼んでいます。中心になる手段は、金融機関への資金の貸し付けや、国債などの売り買いです。日本銀行はこの手段で、金融市場でついている金利に影響を与えます。呼び名はオペレーションで、日本語では公開市場操作です。

金利が動くと、その影響は私たちの暮らしまで届きます。日本銀行の説明をたどると、金利が下がるときは次のような流れになります。

  1. 銀行は低い金利でお金を集められるので、会社や個人に貸すときの金利も下げられる
  2. 会社は、給料や仕入れにあてるお金や、工場・店を建てるお金を借りやすくなる。個人も、家を買うためのお金を借りやすくなる
  3. 経済活動が活発になり、景気を上向かせる方向に働く。物価には押し上げる力がかかる

金利が上がるときは、この流れが逆に進みます。お金を借りにくくなって経済活動が抑えられ、景気の過熱を冷まし、物価を押し下げる方向に働きます。日本銀行は、前者を金融緩和、後者を金融引締めと呼んでいます。家を買おうとしている人にとって、日本銀行の決定は遠い世界の話ではありません。

金融政策を決めるのは、政策委員会の「金融政策決定会合」です。メンバーは総裁、副総裁2人、審議委員6人の9人で、会合は年8回、毎回2日間かけて開かれます。9人とも、内閣が任命する前に、衆議院と参議院の同意が要ります。

日本銀行が目指す物価の安定には、具体的な目印があります。消費者物価の前の年と比べた上昇率2%を「物価安定の目標」とするもので、2013年1月の金融政策決定会合で導入されました。

昔の「公定歩合」という言葉を覚えている人もいるかもしれません。かつては公定歩合が代表的な政策金利で、預金金利なども連動していました。1994年に金利の自由化が終わると、その連動はなくなりました。かつての公定歩合は、今は基準貸付利率と呼ばれています。

金利をどの水準にするかは、会合のたびに決まり、公表されます。時期によって変わる数字は、すぐに古くなります。そこでこの記事では、金利の数字や先の見通しは書かず、金利を動かす仕組みのほうを書きました。

日本銀行は政府から独立している?

日本銀行は政府から独立している、と聞いたことがある人も多いかもしれません。ただ、法律の書き方はもう少していねいです。

日本銀行法第3条第1項は、日本銀行が通貨と金融の調節をするときの「自主性は、尊重されなければならない」としています。日本銀行は、各国の歴史を振り返ると、中央銀行は金融をゆるめるよう求められやすい立場にある、と説明しています。物価の安定が崩れれば、経済全体がうまく回らなくなりかねません。そこで、金融政策の判断を中央銀行に任せる考え方がとられています。

一方で第4条は、政府の経済政策の基本方針と食い違わないよう求めています。条文の言葉では「常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」です。金融政策決定会合には、財務大臣や経済財政政策担当大臣、またはその指名する職員が出席できます(第19条)。意見を述べたり議案を出したり、議決を次の会合まで延ばすよう求めたりもできます。ただし、政府からの出席者に議決権はありません。

1998年に施行された法改正で、旧法にあった政府の広い監督の権限が見直されました。今は、法令に反していないかのチェックに絞られています。政府の言うとおりに動くのでも、政府とまったく関わらないのでもない。自分で決める立場と、政府とすり合わせる務めの両方が、法律に書かれています。

自分で決める立場には、説明する責任もついてきます。第3条第2項は、何を決めたかだけでなく、どんな議論を経て決めたかも、国民に示す努力を求めています。金融政策決定会合の議事録は、10年たってから公開されます。

日本銀行は自由にお金を発行できる?

お札を出せるのが日本銀行だけなら、いくらでも刷って配れるのでは、と考える人もいるかもしれません。お札を発行する権限は、たしかに日本銀行法第46条で日本銀行にあります。

けれども、お札が世の中に出ていくのは、銀行などが当座預金を引き出したときです。日本銀行は、お札の発行額は世の中がどれだけお札を求めているかで決まる、と説明しています。買い物や小口の取引が増えれば、お札を求める量も増えます。ほかの金融資産の利回りなども影響する、というのが日本銀行の説明です。

国にお金を出してお札を増やす道は、前に見たとおり、財政法第5条で原則として禁止です。法律で発行の権限を持つことと、好きなだけ出せることは別の話です。

お札を出すことで生まれる利益にも、行き先の決まりがあります。日本銀行にとって、お札は利息を払わなくてよい負債です。一方で、お札と引き換えに持つ国債などからは利息を受け取ります。この差から生まれる利益を、通貨発行益といいます。お札が負債とされるわけは日本銀行券とはで紹介しています。

経費や税金を払ったあとの利益は、準備金と出資者への配当を除いて、国に納められます。これが国庫納付金で、国の一般会計の歳入になります。配当の率は、第53条で年5%までに抑えられています。お札を出す権利を国から与えられているからこそ生まれる利益は、最後は国のお金に戻る仕組みです。

日本銀行と普通の銀行は何が違う?

どちらも名前に「銀行」と付きますが、相手が違います。日本銀行の資料で確かめられる違いを、表にしました。

比べること日本銀行普通の銀行
口座を持てる人金融機関や国など。個人や一般の会社は持てない個人や会社
お札日本で唯一発行する日本銀行の当座預金から引き出して受け取る
国のお金政府預金を預かる税金や年金などの受け払いの窓口になる

私たちが口座を開く相手は普通の銀行で、日本銀行の相手は、その銀行や国です。仕事の範囲にも違いがあります。日本銀行法は、日本銀行がこの法律にある業務のほかの仕事をすることを、原則として認めていません(第43条)。例外として、目的を果たすうえで必要な仕事なら、財務大臣と内閣総理大臣が認めた場合にかぎって行えます。

よくある質問

日本銀行の総裁は、どうやって決まる?

国会の衆議院・参議院がそろって同意した人を、内閣が総裁や副総裁に任命します(第23条)。任期は5年で、再任もできます。

お札に押されている印は、だれのもの?

表は日本銀行の総裁の印、裏はお札の発行などを受け持つ発券局長の印です。お札に入っている番号やマークの意味は、日本銀行券とはにまとめています。

お札が金と交換できた時代もあった?

明治から戦前にかけての日本銀行券は、銀や金に替えられる約束つきのお札でした。今のお札との違いは、兌換紙幣と不換紙幣で紹介しています。

  • 日本銀行は日本の中央銀行で、法律で作られた認可法人。お札を刷るのは国立印刷局、発行するのは日本銀行、硬貨を発行するのは政府
  • 仕事は、発券銀行・銀行の銀行・政府の銀行の3つで整理できる。目的は物価の安定と金融システムの安定
  • 金融政策は、金利を通じて借りやすさや景気、物価に働きかける。決めるのは年8回の金融政策決定会合
  • 金融政策での自主性は尊重されるが、政府との意思疎通も法律で求められている。国債の直接の引き受けは原則として禁止
出典