お札は、一万円券でも平均4〜5年ほどで役目を終えます。硬貨はもっと長く、世の中を回り続けます。造幣局で生まれた硬貨がどうやって財布に届き、どこへ戻り、最後にどうなるのか。日本銀行・造幣局・財務省の資料と法律から、硬貨の一生をたどります。
- 硬貨は造幣局が作り、政府が発行する。日本銀行に交付された時点で発行になり、金融機関を通じて世の中へ出ていく
- 寿命は何年とは決まっていない。造幣局は、30年ほど人の手を渡ると、すり減りや汚れが目につき始めると説明している
- 使えなくなった硬貨は、造幣局で素材ごとに溶かされ、新しい硬貨の材料に戻る。裁断されるお札との大きな違い
01 硬貨はどこから世の中に出てくる?
硬貨の一生は、造幣局の工場から始まります。ただし、作った造幣局が、そのまま世の中に送り出すわけではありません。日本銀行によると、硬貨を発行するのは政府です。硬貨がお金として世に出たと数えられるのは、造幣局から日本銀行に渡ったときです。
その先は、お札と同じ道をたどります。銀行などの金融機関は、日本銀行の当座預金からお金を引き出すときに、硬貨を受け取ります。そこから、預金を下ろした人や企業へと渡っていきます。
工場でどう作るかは硬貨はどうやって作られる?、作る所と発行する所の違いは造幣局とはで紹介しています。
02 世の中にはどれくらいの硬貨がある?
日本銀行の統計によると、2026年9月末の貨幣流通高は4兆5,787億円でした。同じ月末のお札(日本銀行券発行高)は114兆2,474億円です。お札と硬貨を合わせた金額のうち、硬貨は約4%にあたります。
9月の平均残高で比べると、硬貨の流通高は前の年の同じ月より1.2%少なくなっています。
03 使われた硬貨はどこへ戻る?
世の中で使われた硬貨の一部は、日本銀行に戻ってきます。造幣局の説明では、日本銀行に集まった硬貨は、まず選別されます。まだ十分に通用する硬貨は、枚数を確かめてから、また世の中に戻されます。
お札も、日本銀行に戻ると枚数を数えられ、本物かどうか、傷みや汚れがどの程度かを調べられます。本物で、まだ使えるお札は、再び金融機関に支払われます。日本銀行を起点に、出ては戻るという動きは、お札も硬貨も同じです。
04 硬貨の寿命はどれくらい?
造幣局は、硬貨の寿命は何年とははっきりわからない、としています。法律で流通が止められるか、傷んで回収されるかしない限り、半永久的に世の中を動いていると考えてほしい、という説明です。
ひとつの目安として、造幣局は30年ほどという数字を挙げています。そのくらい人の手を渡ると、表面がすり減ったり、汚れが目についたりしてくるそうです。お札はどうかというと、一万円券が平均4〜5年、つり銭でよく行き来する五千円券と千円券は1〜2年ほどです。並べてみると、硬貨が世の中にいる時間の長さがわかります。
05 使えなくなった硬貨はどうなる?
日本銀行に戻った硬貨には、ひどくすり減ったものや、形や色が変わったものもあります。こうした硬貨は、もう使えない「流通不便貨」として分けられます。一定の量がたまると、作った造幣局に戻され、素材ごとに溶かされて、再び硬貨の材料になります。
造幣局の令和6年度の事業報告書にも、この流れが書かれています。すり減るなどして古くなった硬貨は、世の中から回収されます。改鋳で新しい硬貨に置き換えられた古い硬貨も同じです。どちらも、国から造幣局に渡されます。造幣局は、この回収貨幣を、製造の途中で出るスクラップ(返り材)と一緒に溶解炉に入れます。そこから、硬貨用の金属の塊(鋳塊)を作っています。
造幣局は、回収貨幣と返り材の再利用100%を、計画の項目に掲げています。5円玉は黄銅、10円玉は青銅でできていて、成分の割合には幅を持たせて管理しています。造幣局はその説明の中でも、回収した硬貨を溶かして材料に使うリサイクルに触れています。
06 回収された硬貨は、もうお金ではない?
回収された硬貨の扱いは、貨幣回収準備資金に関する法律に書かれています。政府が引き換えたり回収したりした硬貨は、国の「貨幣回収準備資金」に入れて持つことになっています。そのときの値打ちは、額面ではなく、地金の時価で数えます。
資金に入った地金は、硬貨の材料として造幣局に渡すことができます。必要があれば、売り払うこともできます。地金を預かる役目も、造幣局に任せられます。
造幣局は、記念硬貨を例に説明しています。記念硬貨を銀行などでふだんの硬貨に替えると、その記念硬貨は日本銀行を通って造幣局へ帰ってきます。帰ってきた時点で、もう貨幣ではありません。国が持つ地金という扱いになり、造幣局が預かります。そして素材ごとに溶かされ、新しく発行する硬貨の材料になります。
07 地金はどうやって売られる?
財務省は、地金の売払いを一般競争入札で行っています。問い合わせ先は、理財局の貨幣回収準備資金係です。
令和8年度の見通しでは、入札は8回予定されています。各回とも、おおむね3区分・合わせて約300トンの地金が予定されています。種類は洋白・青銅・白銅などで、1区分あたり約100トンです。8回分を足すと、約2,400トンです。
地金は、大きな塊で売られます。標準的な白銅の1塊は、長さ約1,450mm、幅約290mm、高さ約145mmで、重さは約530kgです。長さは約1.45mあり、約100トンの白銅は約190塊になります。引き取る場所は、広島市にある造幣局広島支局です。
08 お札の一生とどこが違う?
お札と硬貨の一生を並べると、次のようになります。
| 項目 | お札 | 硬貨 |
|---|---|---|
| 作る所 | 国立印刷局 | 造幣局 |
| 発行する所 | 日本銀行 | 政府 |
| 発行になる時点 | 金融機関が当座預金を引き出したとき | 日本銀行へ交付された時点 |
| 使われる期間 | 一万円券で平均4〜5年 | 決まっていない(30年ほどで、すり減りや汚れが目につき始める) |
| 使えなくなったら | 裁断。一部は再利用、残りは焼却 | 溶かされ、硬貨の材料として再利用 |
いちばん違うのは、最後の行です。お札は、日本銀行の点検で使えないとされたら、細かく切り刻まれます。裁断くずの一部はトイレットペーパーなどに生まれ変わり、残りは自治体の施設で焼却されます。硬貨は溶かされて、もう一度、硬貨の材料になります。お札がたどる道はお札の一生とは?で紹介しています。
09 よくある質問
傷んだ硬貨は交換できる?
日本銀行の本店や支店に持ち込むと、法令の基準に基づいて引き換えてもらえます。どこまで引き換えてもらえるかは、硬貨を傷つけたり溶かしたりすると違法?で紹介しています。
記念硬貨も買い物に使える?
日本銀行によると、記念硬貨も通常の硬貨と同じように使えます。ただ、記念硬貨は素材も大きさもさまざまなので、自動販売機では受け付けないこともあります。そのときは、日本銀行か金融機関の窓口に持っていけば、ふだんの硬貨に替えてもらえます。これまでの記念硬貨は記念硬貨の一覧にまとめています。
自分で硬貨を溶かしてもいい?
いけません。硬貨をわざと傷つけたり溶かしたりすることは、どんな目的であっても、貨幣損傷等取締法で禁じられています。
- 硬貨は造幣局が作り、政府が発行する。日本銀行へ交付された時点で発行になり、金融機関を通じて世の中に出ていく
- 日本銀行に戻った硬貨は、使えるものは再び世の中へ、使えない流通不便貨は造幣局で素材ごとに溶かされ、新しい硬貨の材料になる
- 回収された硬貨は、法律上、貨幣回収準備資金に入り、地金の時価で数えられる。造幣局に渡して材料にするほか、売り払うこともできる


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