決算書の中で、損益計算書は「1年でいくらもうけたか」の表です。もう一つの柱である貸借対照表は、見方が少し違います。こちらは、決算日のその日に、会社が何を持っていて、それをどうやって用意したかを写した表です。この記事では、100円ショップのセリアが出した2026年3月期の決算短信を使って、貸借対照表を1行ずつ読んでいきます。
- 貸借対照表は、決算日の1日時点の表。資産=負債+純資産の形で、左右(上下)の合計が必ずそろう
- 資産は現金だけではない。負債は借金だけではない。純資産も手元のお金ではない
- 会社が自分の株を買うと、現金と純資産が同じように減る。利益が出た年でも、純資産が減ることがある
01 貸借対照表とは?
貸借対照表は、資産の部・負債の部・純資産の部の3つに分けて書く表です。財務諸表等規則(第12条)と会社計算規則(第73条)が、どちらも3つの部に分けて表示するよう定めています。
1時点の表であることは、見出しの日付で分かります。セリアの貸借対照表の見出しにあるのは、2026年3月31日という1日だけです。損益計算書の見出しには、2025年4月1日から2026年3月31日までと、1年間の期間が書かれています。
セリアの決算短信も、貸借対照表の数字を「当期の財政状態の概況」として説明しています。
02 資産・負債・純資産はどうつながる?
貸借対照表の数字は、いつも次の形でつながっています。
資産 = 負債 + 純資産
セリアの2026年3月31日時点では、次のとおりです(単位は百万円)。
| 部 | 金額 |
|---|---|
| 資産合計 | 128,681 |
| 負債合計 | 35,843 |
| 純資産合計 | 92,837 |
資産は約1,287億円、負債は約358億円、純資産は約928億円です。会社が持っているもの(資産)を、これから返したり払ったりするお金(負債)と、それ以外(純資産)で用意した、という見方になります。純資産は、資産から負債を差し引いた残りです。
表の負債と純資産を足すと128,680で、資産合計の128,681と1ずれます。これは、決算短信が百万円未満を切り捨てて書いているためです。実際の金額がずれているわけではありません。資産から負債を引いても92,838となり、表の純資産と同じように1ずれます。
03 資産は現金のこと?
資産には、現金のほかにも、会社が持っているさまざまなものが入ります。財務諸表等規則は、資産を流動資産・固定資産・繰延資産に分けるとしています(第14条)。固定資産は、さらに有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産に分けます。また第13条は、資産や負債の科目を流動性配列法で並べると定めています。資産の部では、流動資産を先に、固定資産を後に書く形になり、セリアの表もこの順です。
セリアの資産の部から、金額の大きい行を抜き出しました(単位は百万円)。
| 区分 | 行の名前 | 金額 |
|---|---|---|
| 流動資産 | 現金及び預金 | 39,075 |
| 流動資産 | 売掛金 | 8,311 |
| 流動資産 | 商品及び製品 | 26,056 |
| 流動資産 | 流動資産合計 | 82,154 |
| 固定資産 | 建物(純額) | 22,141 |
| 固定資産 | 敷金及び保証金 | 14,884 |
| 固定資産 | 固定資産合計 | 46,526 |
現金及び預金は約391億円で、資産合計の約3割です。残りの約7割は、商品、建物、敷金及び保証金などの形で持っています。売掛金は、商品を売ったけれど、まだ代金を受け取っていない分です。
資産が1,287億円あるからといって、会社に1,287億円のお金があるわけではありません。なお、預金でも、1年以内に期限が来ない預金は流動資産の「現金及び預金」に入れない決まりです(第15条)。
04 負債は借金のこと?
負債は、借りたお金だけではありません。仕入れの代金や税金など、これから払うものも負債に入ります。財務諸表等規則は、負債を流動負債と固定負債に分けています(第45条)。流動負債には、1年以内に支払ったり返したりすると認められる負債なども入ります(第47条)。
| 区分 | 行の名前 | 金額 |
|---|---|---|
| 流動負債 | 買掛金 | 14,263 |
| 流動負債 | 未払法人税等 | 4,262 |
| 流動負債 | リース債務 | 425 |
| 流動負債 | 流動負債合計 | 27,732 |
| 固定負債 | 資産除去債務 | 6,866 |
| 固定負債 | 固定負債合計 | 8,111 |
セリアの負債でいちばん大きいのは、約143億円の買掛金です。規則では、買掛金は通常の取引で生まれた営業上の未払金とされています。商品を仕入れて、代金をまだ払っていない分です。未払法人税等は、まだ納めていない税金です。
借入金がある会社は、流動負債に短期借入金、固定負債に長期借入金として書くことになっています(第49条・第52条)。セリアの2026年3月期の貸借対照表には、短期借入金・長期借入金という行はありません。それでも、買掛金やリース債務などで、負債は約358億円あります。
決算短信には、有利子負債を使った指標も載っています。決算短信の説明では、負債のうち利子がつくものを全部足した額が、有利子負債です。借入金の行がないことと、利子のつく負債がまったくないことは、同じ意味ではありません。
05 純資産は手元のお金?
純資産も、お金の量を表しているわけではありません。純資産は、株主資本と評価・換算差額等などに分けて書きます(第59条)。株主資本は、さらに資本金・資本剰余金・利益剰余金に分けます(第60条)。
| 行の名前 | 金額 |
|---|---|
| 資本金 | 1,278 |
| 利益剰余金合計 | 116,883 |
| 自己株式 | △26,876 |
| 株主資本合計 | 92,704 |
| 純資産合計 | 92,837 |
数字で見ると、純資産の約928億円は、現金及び預金の約391億円より大きくなっています。利益の積み重ねである利益剰余金は約1,169億円で、現金のおよそ3倍です。利益剰余金は、これまでの利益の積み重ねから配当などを差し引いた、帳簿上の数字です。現金の残高ではありません。会社の資産には、現金だけでなく、商品や建物、敷金及び保証金なども含まれます。利益剰余金と現金の金額は、一致しません。
純資産は、帳簿の上で資産から負債を引いた差額です。会社を売ったときの値段や、株式市場でついている値段とは別のものです。セリアの決算短信では、自己資本比率(自己資本÷総資産)が72.1%でした。時価ベースの自己資本比率(株式時価総額÷総資産)は183.1%です。分母はどちらも総資産なので、株式市場でついている値段の合計は、帳簿の自己資本の約2.5倍です。
06 自分の株を買うと、なぜ純資産が減る?
セリアの純資産の部には、△26,876という、マイナスの行があります。これが自己株式で、会社が自分の株を買い戻した分です。
会社が自分の株を買うと、代金として現金が出ていきます。ところが、買った自分の株は資産の部には入れず、純資産から差し引いて書きます。財務諸表等規則は、自己株式を株主資本から差し引く項目として、利益剰余金の次に書くと定めています(第66条)。
現金が出ていった分だけ資産が減り、同じ額が純資産からも引かれます。資産にも純資産にも、自分の株の分は残りません。キャッシュ・フロー計算書を見ると、セリアはこの1年で、自分の株を買うために約251億円を支払っています。
07 利益が出たのに、純資産が減ったのはなぜ?
前の年と並べると、この1年の動きが見えてきます(単位は百万円)。
| 行の名前 | 2025年3月31日 | 2026年3月31日 |
|---|---|---|
| 資産合計 | 141,496 | 128,681 |
| 現金及び預金 | 59,154 | 39,075 |
| 負債合計 | 33,493 | 35,843 |
| 自己株式 | △1,740 | △26,876 |
| 純資産合計 | 108,002 | 92,837 |
セリアは2026年3月期に約147億円の当期純利益を出しました。一方で、約251億円を自己株式の取得に使っています。純資産は、前の年の約1,080億円から約928億円に減りました。会社はこの減少を、自己株式の取得等によるものと説明しています。
株主資本等変動計算書を見ると、純資産を動かしたのは自己株式だけではありません。当期純利益で約147億円増え、配当で約48億円減っています。いくつかの動きを合わせた結果が、決算短信にある151億64百万円の減少です。
資産の側でも、流動資産が減った理由として、会社は自社株の取得で手元の現金と預金が減ったことなどを挙げています。現金及び預金は約592億円から約391億円になりました。固定資産のほうは、店を新しく出したり改装したりして、建物などが増えたという説明です。負債のほうは、仕入れの代金である買掛金が増えたことなどで、前の年より大きくなっています。
利益が出た年でも、純資産や現金が減ることはあります。貸借対照表は、損益計算書だけでは見えない、お金の使い道の結果も映しています。
08 よくある質問
損益計算書とは、どこでつながっている?
いくつかの行が、同じ数字でつながっています。たとえば、資産の部の「商品及び製品」26,056は、損益計算書の商品期末棚卸高と同じ数字です。当期純利益は利益剰余金に積み上がります。損益計算書の読み方は決算の読み方、利益の種類は5つの利益の違いで紹介しています。
自己資本比率は何を表す?
総資産のうち、自己資本がどれだけかを表す割合です。セリアの決算短信では、自己資本÷総資産で計算していて、2026年3月期は72.1%でした。1年前より4.2ポイント下がりました。何%なら安心といった目安は、この決算短信には書かれていません。ROE(自己資本に対する利益の割合)は利益率とはで紹介しています。
自己株式や資本金は、株式会社の仕組みとどう関係する?
資本金や自己株式は、株主から集めたお金や、株主から買い戻した株に関わる行です。株主・配当の仕組みは株式会社の仕組みにまとめています。
- 貸借対照表は決算日の1日時点の表。資産の部・負債の部・純資産の部に分け、資産=負債+純資産になる
- セリアの2026年3月31日時点は、資産約1,287億円、負債約358億円、純資産約928億円。表の数字は百万円未満切捨てで、足すと1ずれる
- 資産のうち現金及び預金は約3割。負債でいちばん大きいのは買掛金で、表に短期借入金・長期借入金の行はない
- 純資産・利益剰余金は、どちらも現金より大きい。純資産は帳簿の上の差額で、手元のお金でも、株式市場の値段でもない
- 自己株式は資産ではなく、純資産から差し引く。約251億円の自社株買いなどで、利益が出た年でも純資産は減った(会社の説明は「自己株式の取得等」)

