財布の中に二千円札が入っていることは、ほとんどないかもしれません。もう使えないお札だと思っている人もいそうですが、二千円札は今も発行されている現役のお札です。では、なぜここまで見かけないのか。日本銀行が時期ごとに語ってきた説明を、順にたどってみます。
- 二千円札は2000年に、九州・沖縄サミットの機会に出たお札。今も発行されていて、ふつうに使える
- 作られたのは2000年度と2003年度の2回、合わせて8.8億枚だけ。今の一万円札1年分の発注の約半分
- 日本銀行は、ATMなど機械の対応が進まなかったことや準備期間、決済の習慣を理由に挙げている
01 二千円札はいつ、なぜ出た?
二千円札が出たのは2000年7月19日です。日本銀行の内田副総裁は2025年の講演で、九州・沖縄サミットの機会に発行されたお札だと紹介しています。
表の図柄は人物ではなく、沖縄の守礼門です。裏には紫式部の顔が描かれていますが、国立印刷局はこれを肖像とは扱っていません。
もうひとつの背景が、「2」のつくお札です。海外では、20ドル札や20ユーロ札など、「2」のつくお札が広く使われています。日本銀行も、この点を挙げて二千円札の利点を説明しています。
02 「2」のつくお札は何が便利?
日本銀行が挙げる利点は、払うときと受け取るときのお札の枚数を減らせることと、偽造に強くなることの2つです。
枚数の話は、実際に数えてみると分かりやすくなります。1,000円から9,000円までを、なるべく少ない枚数で払うとどうなるかを比べました。
| 払う金額 | 千円札と五千円札だけ | 二千円札も使う |
|---|---|---|
| 1,000円 | 1枚 | 1枚 |
| 2,000円 | 2枚 | 1枚 |
| 3,000円 | 3枚 | 2枚 |
| 4,000円 | 4枚 | 2枚 |
| 5,000円 | 1枚 | 1枚 |
| 6,000円 | 2枚 | 2枚 |
| 7,000円 | 3枚 | 2枚 |
| 8,000円 | 4枚 | 3枚 |
| 9,000円 | 5枚 | 3枚 |
千円札と五千円札だけだと最大5枚かかるのに、二千円札を加えると、どの金額も最大3枚で済みます。4,000円なら、千円札4枚が二千円札2枚になる計算です。内田副総裁も、二千円札の発行は「数学的にとても合理的だった」と述べています。
03 二千円札はどれくらい作られた?
ここで、作られた枚数を見てみます。日本銀行が国立印刷局に出したお札の注文(発注高)の推移を見ると、二千円札の欄に数字があるのは2回だけです。
| 年度 | 二千円札の発注 |
|---|---|
| 2000年度 | 7.7億枚 |
| 2003年度 | 1.1億枚 |
| そのほかの年度 | なし |
合計8.8億枚。これに対して、2025年度に注文された一万円札は、1年分だけで16.4億枚です。二千円札がこれまでに作られた全部を合わせても、今の一万円札1年分の約半分にしかなりません。今見かける機会が少ない背景の一つとして、発注された枚数そのものが限られていることも分かります。
04 なぜ広まらなかった?
日本銀行の見方を、時期の古い順に並べます。言い方の強さもそのままです。
2000年(発行から3か月):速水総裁は記者会見で、こう述べました。二千円札があまり流通しないのは「ATMなどの機械の対応が進んでいないということが最大の原因ではないか」。ATMを新しいお札に対応させる費用については、「私もよく知らないが」と断ったうえで、1台30万円とか40万円とかいう話も聞くと話しています。このときは、銀行や鉄道、小売りの業界を回って協力を求める方針を示し、「慣れてくれば必ず流通していく」と見通しを語っていました。
2012年:日本銀行の発券局総務課長は、いちばん大きいのは機械の広がりだと説明しました。海外の「2」のつくお札は、現金を扱う機械より先に出回っていたので根づいた。日本は順番が逆で、二千円札が出たころには、機械がもう広く行き渡っていた。機械を対応させる費用のほうを重く見る人が多かったのだろう、という見立てです。
2025年:内田副総裁は講演で、準備期間が十分でなかった事情もあると認めました。そのうえで、「良いものを作ればみんなが使う」と考えるだけでは足りず、支払いの手段はそれだけで決まるものではない、と話しています。支払いは払う側と受け取る側の両方が納得して成り立つので、人々の習慣が大きく左右する。こうした性質を「経路依存性」と呼んでいます。
3つの説明を並べると、最初は「機械の対応」の話でした。そこに、あとから「準備期間」や「人々の習慣」という見方が加わっています。
05 沖縄では使われている?
全国では見かけなくても、沖縄県は事情が違います。2012年の説明では、沖縄県は別だとされています。お札のデザインに守礼門があることも手伝って、県内では二千円札がよく使われている、という説明です。一方で、沖縄の外では「それほど見かけない」という声があるとも記しています。
2025年の講演でも、沖縄県では相応に流通していると紹介されています。どれくらいの枚数が出回っているかまでは、日本銀行の説明には書かれていません。
06 二千円札は今も使える?
国立印刷局によると、2000年に出た二千円札は今も発行されているお札です。発行から26年たった今も、法律上の立場は一万円札や千円札と同じ、現役の日本銀行券です。
ここで少し引っかかるかもしれません。前の節で見たとおり、二千円札の発注は2003年度が最後です。ここでいう「発行されている」は、毎年新しく作っているという意味ではありません。日本銀行は、二千円札を今も発行中のお札として扱っています。一方、国立印刷局への発注は、2026年1月に公表された資料で見るかぎり、2003年度のあとにはありません。お札の「発行」と「製造」は、別のことなのです。
日本銀行と財務省は、お金を扱う業界、たとえば銀行やお店、観光、鉄道の会社に、二千円札を使ってもらえるよう働きかけてきました。手元に二千円札があれば、お店でそのまま出してかまいません。
07 よくある質問
二千円札の大きさは?
横の長さは154mmで、五千円札(156mm)と千円札(150mm)の間です。くわしくは二千円札の重さと大きさにあります。
新しい二千円札は出る?
2024年に出た新しいお札は、一万円・五千円・千円の3種類で、二千円札は入っていません。新しいお札については新紙幣はいつから?にまとめています。
二千円札の顔はだれ?
表は人物ではなく守礼門です。お札の肖像の決まり方はお札の肖像画はどう決まる?にあります。
- 二千円札は2000年7月19日に出た、今も発行されている現役のお札。表は守礼門
- 発注は2000年度・2003年度の2回、合計8.8億枚。2025年度の一万円札1年分(16.4億枚)の約半分
- 日本銀行の説明は、2000年の「機械の対応」から、2025年の「準備期間」「人々の習慣(経路依存性)」へと広がっている。沖縄県では今も相応に使われている

