海外旅行の両替や、ニュースの為替の話でよく目にする米ドル。アメリカのお札は何種類あって、誰が描かれているのでしょうか。米ドル紙幣は、いま1・2・5・10・20・50・100ドルの7種類が発行されています。この記事では、米国の公式資料をもとに、それぞれの肖像と裏面の図柄を整理します。誰がお札を出しているのか、古いお札の扱いはどうなっているのかも、日本のお札と比べながら見ていきます。
- 現在発行されている米ドル紙幣は、1・2・5・10・20・50・100ドルの7種類
- 肖像は7人。大統領のほかに、財務長官だったハミルトンと、フランクリンが描かれている
- 発行するのは連邦準備制度理事会、印刷するのは財務省の彫刻印刷局。古いお札も法律上は額面どおりの価値を保つ
01 米ドル紙幣はいま何種類?
米国の連邦準備制度理事会が運営する「米国通貨教育プログラム」によると、いま発行されている紙幣は次の7種類です。
- 1ドル、2ドル、5ドル、10ドル、20ドル、50ドル、100ドル
2ドル札も、現在の券種に含まれています。
かつては、これより高い額のお札もありました。500ドル、1,000ドル、5,000ドル、1万ドルの4つです。1969年7月14日に、連邦準備制度と財務省が、使われなくなったことを理由にこれらの発行をやめると発表しました。最後に印刷されたのは1945年です。今のお店で目にすることはありません。
02 それぞれの肖像と裏面の図柄は?
米国通貨教育プログラムの券種ページにある説明を、表にまとめました。
| 券種 | 表の肖像 | 裏面の図柄 |
|---|---|---|
| 1ドル | ジョージ・ワシントン | 合衆国国璽 |
| 2ドル | トーマス・ジェファーソン | 独立宣言の署名の場面 |
| 5ドル | エイブラハム・リンカーン | リンカーン記念堂 |
| 10ドル | アレクサンダー・ハミルトン | 財務省ビル |
| 20ドル | アンドリュー・ジャクソン | ホワイトハウス |
| 50ドル | ユリシーズ・グラント | 合衆国議会議事堂 |
| 100ドル | ベンジャミン・フランクリン | 独立記念館 |
1ドル札は、1963年に最初の連邦準備券として出て以来、デザインが変わっていません。2ドル札の裏は、ジョン・トランブルの絵「独立宣言」を彫刻にしたものです。もとの絵には47人が描かれていますが、紙幅の都合で、お札に入ったのは42人だけだそうです。
アメリカのお札の肖像には、名前が下に入っています。法律(合衆国法典 第31編 第5114条)は、肖像にできるのは亡くなった人だけで、肖像の下に名前を入れると決めています。米国通貨教育プログラムの年表によると、肖像に名前を入れる決まりは1889年の法律から始まりました。
03 大統領ではない人も描かれている?
描かれています。米国通貨教育プログラムが「大統領」と紹介しているのは4人です。1ドルのワシントン、5ドルのリンカーン、20ドルのジャクソン、50ドルのグラントです。2ドルのジェファーソンは、券種ページでは肩書がついていませんが、米国下院の歴代大統領の一覧では第3代の大統領です。大統領は合わせて5人になります。
残りの2人は大統領ではありません。米国下院の歴代大統領の一覧にも、2人の名前はありません。
- 10ドルのハミルトン:米国通貨教育プログラムの年表では、財務長官という肩書で登場する
- 100ドルのフランクリン:年表では1739年の項目に登場する。フィラデルフィアの自分の印刷会社で植民地時代のお札を作り、偽造対策に取り組んだ人物
どうしてこの人物なのかは、券種ページには書かれていません。この記事でも、人物を描いたいきさつには立ち入らないことにします。
お札のデザインは、連邦準備制度や財務省などでつくる委員会が提案し、最終的には財務長官が決める仕組みです。米国通貨教育プログラムは、財務長官が法律上の最終的な権限を持つと説明しています。日本で肖像が決まる流れは、お札の肖像画の決まり方の記事で紹介しています。
04 米ドル紙幣は誰が発行している?
いま出回っている米ドル紙幣は、「連邦準備券」と呼ばれるお札です。発行しているのは連邦準備制度理事会で、米国通貨教育プログラムは、財務省とは別の組織だと説明しています。
印刷するのは、財務省の彫刻印刷局(BEP)です。連邦準備制度理事会は、毎年どの券種を何枚つくるかを決め、彫刻印刷局に注文します。できたお札は、連邦準備銀行から銀行などの金融機関に渡り、そこから私たちの手に届きます。
日本と比べると、次のようになります。
| 項目 | アメリカ | 日本 |
|---|---|---|
| 発行する | 連邦準備制度理事会 | 日本銀行(日本銀行法第46条) |
| 作る | 財務省の彫刻印刷局 | 国立印刷局 |
| 古いお札 | 1914年以降の連邦準備券はすべて額面どおり有効 | 25種類の銀行券が有効 |
「発行する組織」と「印刷する組織」が分かれている点は、日米で同じです。日本の仕組みは日本銀行券とは、国立印刷局とはで紹介しています。
05 古い米ドル紙幣は今でも使える?
法律の上では、今も額面どおりの法定通貨です。合衆国法典 第31編 第5103条は、連邦準備券を含む米国の通貨を法定通貨と定めています。米国通貨教育プログラムのFAQによると、古いデザインも新しいデザインも、発行の時期に関係なく法定通貨です。額面の価値もそのまま保ちます。1914年から今までのすべての券種の連邦準備券が対象です。
ただし、同じFAQは、民間の店や個人がお札での支払いを受け取る義務はないとも書いています。現金を受け付けるかどうかは店ごとの方針しだいで、州や地方の法律に別の決まりがある場合を除く、という説明です。古いデザインのお札を使いたいときは、受け付けてくれる地元の銀行を探すようすすめています。
日本で両替するときも同じです。アメリカで法定通貨であることと、日本の銀行や両替所で受け付けてもらえるかどうかは、別の話です。古い米ドル紙幣を替えたいときは、先に両替先に確かめておくと安心です。日本のお札の場合は、昔のお札の確かめ方と引き換え方で紹介しています。
06 偽造防止の仕組みは日本のお札とどう違う?
米ドル紙幣の偽造防止は、券種ごとに違います。すべてのお札に同じ技術が入っているわけではありません。
| 券種 | 主な偽造防止の仕組み(現在のデザイン) |
|---|---|
| 1ドル・2ドル | 凹凸のある印刷、赤と青の繊維が入った紙 |
| 5ドル | 数字の5の透かし(大小2種類)、セキュリティスレッド、マイクロプリント |
| 10・20・50ドル | 肖像の透かし、セキュリティスレッド、色が変わる数字、マイクロプリント |
| 100ドル | 上の仕組みに加えて、3-Dセキュリティリボン、インク壺の中の鐘 |
1ドル札と2ドル札の券種ページに載っている仕組みは、指でなぞるとわかる凹凸のある印刷と、紙です。年表によると、セキュリティスレッドとマイクロプリントは1990年シリーズの100ドル札から入りました。1993年シリーズまでに、1ドル札と2ドル札以外のすべての券種に広がっています。
紙は、4分の1が麻、4分の3が綿で、赤と青の繊維が入っています。10ドル札のセキュリティスレッドは、紫外線を当てるとオレンジ色に光ります。お札を傾けると、右下の数字の色が銅色から緑色に変わります。
100ドル札は、2013年にデザインが変わり、新しい仕組みが加わりました。青い3-Dセキュリティリボンは、傾けると鐘の模様が100の数字に変わって動きます。このリボンは印刷ではなく、紙に織り込まれています。インク壺の中の鐘も、傾けると銅色から緑色に変わります。
日本のお札にも、紙の厚さを変えて模様を出す「すき入れ(すかし)」があります。ほかの工夫は、日本のお札の偽造対策の記事にまとめています。
07 よくある質問
2ドル札は今も発行されている?
はい。米国通貨教育プログラムは、2ドル札を現在発行している7種類の一つとしています。
1万ドル札はある?
かつてはありましたが、1969年に発行をやめると発表されました。最後に印刷されたのは1945年です。
- 現在発行されている米ドル紙幣は、1・2・5・10・20・50・100ドルの7種類。500ドル以上の高額紙幣は1969年に発行をやめた
- 肖像は7人。大統領は5人で、10ドルのハミルトンは財務長官、100ドルのフランクリンは大統領ではない
- 発行は連邦準備制度理事会、印刷は財務省の彫刻印刷局。肖像は故人に限り、名前を入れると法律で決まっている
- 1914年以降の連邦準備券は今も額面どおり法定通貨。ただし店には受け取る義務はない(州や地方の法律に別の決まりがある場合を除く)。日本で両替できるかどうかも別の話

