家庭のプリンターでも、写真ならかなりきれいに刷れる時代です。それでもお札は、同じようにはまねできません。紙の厚み、盛り上がったインキ、見る角度で変わる光、ルーペでやっと読める文字。お札には、コピー機やスキャナーでの偽造を難しくする工夫が、いくつも重ねてあります。
- お札の偽造防止の工夫は、紙の厚み・インキの盛り上がり・光の角度・細かさと色の4つに分けると見えやすい
- 2025年に警察が把握した偽札は1,408枚。2025年末の流通枚数と単純に比べると、約1,300万枚に1枚
- あやしいお札は、警察か日本銀行の本店・支店へ届ける。記番号の色が違うだけなら偽札とは限らない
01 偽札はどれくらい見つかっている?
身近に感じることは少なくても、偽札は毎年見つかっています。警察庁がまとめた、偽造銀行券の発見枚数は次のとおりです。
| 年 | 偽造銀行券の合計 | うち一万円券 |
|---|---|---|
| 2022年 | 948枚 | 906枚 |
| 2023年 | 681枚 | 583枚 |
| 2024年 | 2,723枚 | 2,445枚 |
| 2025年 | 1,408枚 | 1,345枚 |
発見枚数は、届け出などで押収したとして各地の警察から警察庁に報告された枚数です。どの年も、見つかる偽札の8割以上が一万円券です。2025年は前の年の約半分でしたが、2024年がなぜ多かったのかは、この資料には書かれていません。
2025年中に見つかった1,408枚と、2025年末に出回っていたお札183.2億枚。両者を単純に比べると、約1,300万枚に1枚にあたります。出回っている本物のお札の量に比べて、見つかる偽札はごくわずかです。ただ、ゼロではありません。偽造された500円玉も、2025年に359枚見つかっています。
02 紙そのものに入っている工夫は?
いちばん古くからある工夫は、印刷ではなく紙の中にあります。お札を明かりにかざすと浮かぶ「すかし」は、正式には「すき入れ」といい、紙の厚さを変えて模様を出しています。お札への登場は古く、1882年の改造紙幣までさかのぼります。
今のお札では、表の肖像と同じ人物がすかしで入っています。顔の部分は、明るく抜けたところと暗く沈んだところの濃淡で描かれています。そのまわりを囲む細かな模様まで透けて見えるのが、高精細すき入れです。
もうひとつが、縦の棒です。縦の棒は、一万円札なら3本、五千円札なら2本、千円札なら1本。明かりにかざすと浮かびます。インキで刷った線ではなく、紙の厚みで描かれた線です。紙そのものの作り方はお札の紙の記事にあります。
ちなみに、すかしのないお札もかつてはありました。終戦直後に出た5種類のお札で、それ以外のほとんどのお札にはすかしが入っています。
03 指でさわって分かる工夫は?
お札の肖像や額面の数字を指でなぞると、ざらっとした手ざわりがあります。この手ざわりの正体が、凹版印刷です。
版を彫って、へこみにインキを詰め、表面をきれいにぬぐってから紙に強く押し当てる。凹版印刷はそういう刷り方です。紙の上にインキが盛り上がって残るので、さわると分かります。国立印刷局は、この手ざわりはプリンターやコピー機では再現できないと説明しています。
インキの山をさらに高くした深凹版印刷もあり、二千円札以降のお札で、額面の数字などに取り入れられています。
このざらつきは、目の不自由な人が指でお札の種類を見分けるマークにも生かされています。今のお札では、マークの形を11本の斜線にそろえ、お札の種類ごとにマークの位置を変えています。マークの形がどう変わってきたかは、新紙幣と旧紙幣の違いにまとめています。
04 傾けると見える工夫は?
正面から見ただけでは気づかないものもあります。お札を少し傾けると、次の3つが現れます。
- 3Dホログラム:角度を変えると、立体的な肖像が回るように見える。肖像のほかの図柄も変わって見える
- 潜像模様:表には「10000」などの額面の数字、裏には「NIPPON」の文字が浮かぶ
- パールインキ:正面では見えず、傾けると左右の端の真ん中あたりにピンク色の光沢が出る
手に持って少し傾けるだけで、見えなかったものが現れたり、絵柄が動いたりします。正面から眺めているだけでは、どれも見落としてしまいます。
05 細かさと色の工夫は?
道具を使うと分かる工夫もあります。
細かい模様の一部は、よく見ると文字でできています。拡大すると読めるのが「NIPPONGINKO」。これがマイクロ文字で、カラーコピー機でまねするのが難しい細かさです。表の日本銀行総裁之印や模様の一部は、紫外線を当てたときにだけ光ります。総裁之印が光るのは、特殊発光インキが使われているためです。
マイクロ文字と発光インキは、1984年に出たお札に、1993年に加えられたものです。国立印刷局によると、カラーコピー機などへの対策でした。同じお札でも、発行のあとから守りが足されることがある、ということです。
色にも工夫があります。今のお札には全部で20色以上が使われ、一万円札・五千円札・千円札は表13色・裏7色、二千円札は表15色・裏7色です。鮮やかで分かりやすい色ほど、カラーコピー機やスキャナーでも似た色を出しやすくなります。それを避けるために、わざと再現しにくい、入り組んだ色合いを選んでいます。
人の目で確かめる技術のほかにも、お札には機械で読み取る偽造に効く技術などが入っています。国立印刷局によると、もし偽造されても、偽札だと必ず突き止められる作りです。日本には現金を扱う機械が多く、その中でお札を回すうえでも、こうした技術が欠かせないという説明です。肖像の線がどれだけ細かいかは、新紙幣の人物の記事でも触れています。
06 あやしいお札を受け取ったら?
さわる・すかす・傾けるの3つで、代表的な偽造防止の工夫は確かめられます。ざらつき、すかしと縦棒、ホログラムは、特別な道具がなくても見られます。
ただし、偽札かもしれないと思ったら、そのお札は使わずに、最寄りの警察か、日本銀行の本店・支店へすぐに届け出ます。自分で本物かどうか決める必要はありません。
一方で、記番号の色がほかのお札と違うだけなら、すぐに偽札とは限りません。日本銀行によると、2004年からのお札のうち一万円札と千円札は、番号が一巡したため色を変えています。一万円札は2011年7月から褐色、千円札は褐色のあと2019年3月から紺色の記番号です。
07 よくある質問
硬貨にも偽造防止の工夫はある?
あります。今の500円玉の工夫は新しい500円玉と旧500円玉の違いにまとめています。
古いお札の偽造防止技術は?
世代ごとにどんな技術が加わってきたかは、一万円札の歴史にまとめています。
- 偽造防止の工夫は、紙の厚み・インキの盛り上がり・光の角度・細かさと色の4つに分けられる
- 2025年の偽造銀行券は1,408枚。2025年末の流通183.2億枚と単純に比べると約1,300万枚に1枚
- あやしいお札は使わずに警察か日本銀行の本店・支店へ。番号の色が違うお札も、それだけで偽札とは決まらない

