1円玉から500円玉まで、日本の硬貨6種類には、どれにも植物が描かれています。5円玉の稲穂・歯車・水は当時の主な産業を、1円玉の若木は伸びていく日本を表すと、造幣局は説明しています。
- 6種類すべてに植物が描かれている。人の顔が描かれた硬貨はない
- 5円玉の絵柄は農業・工業・水産業、1円玉の若木は伸びゆく日本の象徴
- 硬貨の「表」は、年号が入っていない側
01 6種類の硬貨には何が描かれている?
ふだんは額面しか見ない硬貨も、表と裏を並べてみると、描かれているものに共通点があります。日本銀行の一覧をもとに、6種類をひとつの表にまとめました。
並べて分かるのは、6種類すべてに植物が入っていることです。若木、稲穂と双葉、常盤木、菊、桜、そして桐と竹と橘。建物が描かれているのは10円玉の平等院鳳凰堂だけで、人の顔が描かれた硬貨はありません。
見比べると、裏に図柄がない硬貨も3つあります。1円玉・50円玉・100円玉の裏は、額面の数字と年号が入っているだけです。
02 5円玉の稲穂・歯車・水は何を表す?
6種類の中で、はっきりとした意味の説明があるのが5円玉です。造幣局の説明では、描かれているのは、この硬貨が生まれたころの日本を支えていた3つの産業です。
- 稲穂:農業
- 歯車:工業
- 水:水産業
ここでいう「当時」は、5円玉が穴のあいた硬貨として登場した1949年8月のことです。裏の双葉は、戦後に民主国家として歩き始めた日本の象徴だといわれています。5円玉と50円玉の穴の話は硬貨の穴の記事にまとめています。
少し変わっているのが、文字です。絵柄はそのときから同じなのに、文字だけが書き改められました。1959年の改正で、「日本國」の旧字「國」が「国」になり、文字もゴシック体に変わりました。
03 1円玉の木は何の木?
1円玉の表に描かれた木には、決まった名前はありません。造幣局は「若木」とだけ呼んでいます。
モデルになった木を探すより、何を託したかを見るほうが分かりやすい絵柄です。造幣局によると、若木のデザインは、伸びゆく日本を表しています。
1円玉が出たのは1955年です。今つくられている6種類の中ではいちばん古い硬貨で、デザインは一般の人から募集して決まりました。アルミの1円玉が生まれるまでの経緯は1円玉はなぜアルミ?にまとめています。
意外なのは、表と裏が別々の人の作品だということです。表と裏を別々に審査した結果、表の若木と裏の数字は作者が違います。それから今まで、デザインは一度も変わっていません。
04 10円玉はなぜ平等院鳳凰堂?
この問いの答えは「はっきりとは分からない」です。造幣局も、当時の資料が残っていないため、選んだ理由ははっきり分からないとしています。
手がかりはあります。硬貨の図柄は、模様がきれいに出るか、簡単に偽造できないかといった点からも検討されます。10円玉は、戦後の復興期に初めて出たときには、いちばん高い額面の硬貨でした。そのため、偽造を防ぐために細かい図柄が選ばれたとも考えられる、と造幣局は書いています。
平等院鳳凰堂は京都府宇治市にある建物です。藤原頼通が、極楽浄土をこの世に形にしようと建てたものです。
裏の木は「常盤木」で、一年中緑の葉をつけている常緑樹のことです。日本銀行のページでは「常磐木」と書かれています。造幣局は、デザインを発表したころの字にそろえて「常盤木」を使っています。
05 硬貨の表と裏はどっち?
財布の硬貨を見て、どちらが表か迷ったことがある人は多いはずです。実は、法律では硬貨の表と裏は決まっていません。
造幣局は作業の都合から、年号が入っている側を「裏」としています。つまり表は、年号のない側です。10円玉なら平等院鳳凰堂の側、100円玉なら桜の側が表になります。
額面の数字が大きく書かれた側を表だと思っていた人には、逆の答えかもしれません。
こうなったのには、明治から続くいきさつがあります。
- 明治のはじめ:龍の模様がある側が表と定められた
- その後:龍の模様がなくなり、菊の紋章の側を表と呼ぶようになった
- 戦後:硬貨に菊の紋章が使われなくなって、表と裏を見分ける目印がなくなった
- そこで:いつも年号があった側を裏としました
06 なぜ普段使う硬貨には人の顔がない?
お札には肖像がありますが、ふだん使う硬貨にはありません。これも明治にさかのぼります。
新しい硬貨をつくるとき、欧米の国のように元首の肖像を入れる案もありました。けれども、天皇の肖像が人々の手に触れて汚れるのは恐れ多いとして、代わりに龍が描かれました。
その流れで、長いあいだ実在の人物を描いた硬貨は作られませんでした。初めての例は2010年です。地方自治法施行60周年の記念貨幣のうち高知県の分に、坂本龍馬が描かれました。
07 図柄はずっと同じ?
硬貨によって違います。表の絵柄が何度も入れ替わってきたのが100円玉です。
100円玉の表は、1957年に銀貨として出たときは鳳凰でした。1959年に稲穂になり、1967年に白銅の硬貨に変わったとき、今の桜になりました。
50円玉は、形や大きさが変わっても、表にはずっと菊が描かれてきました。500円玉は1982年に登場したあと、偽造を防ぐため、2000年と2021年に素材が変わりました。それでも図柄は同じままです。
硬貨ごとの重さや素材の違いは1億円は何キロ?で比べています。
08 硬貨のデザインは誰が決める?
図案をつくるのは、財務省の求めを受けた造幣局の職員か、募集に応じた一般の人です。どちらの場合も、最後は政府の閣議で決まります。
よく使われるのは、菊・桜・桐のように日本の暮らしになじんだ植物です。ほかに稲、富士山、寺院などの文化財も使われます。
ただ、今ふだん使う6種類には富士山は描かれていません。富士山が登場するのは記念貨幣のほうで、たとえば1964年の東京オリンピックのときに出た千円銀貨があります。
09 よくある質問
5円玉にはなぜアラビア数字がない?
造幣局の説明では、数字や文字の書体までふくめてデザインの一部です。5円玉には、アラビア数字のない今の形が選ばれました。ただ、なぜアラビア数字を使わなかったのかまでは、造幣局も説明していません。
硬貨に年号が入っているのはなぜ?
金貨や銀貨を使っていた時代に、金や銀の品位をはっきりさせるため、年号を刻んでいました。今も入っているのは、その習わしが残っているからです。
硬貨はなぜ丸い?
1869年、大隈重信の意見で、硬貨を丸くすることが決まりました。四角より使うときに便利で、角がないのですり減りにくい、というのが理由です。
- 硬貨6種類には、どれにも植物が描かれている
- 5円玉は産業、1円玉の若木は伸びゆく日本を表す。10円玉の平等院鳳凰堂は、当時の資料がなく選ばれたわけが分からない
- 硬貨の表は年号のない側。法律で決まっているわけではなく、造幣局の扱い

