20年ぶりに新しいお札が出たのは、2024年7月でした。お札の見た目をこうして新しくすることを、「改刷(かいさつ)」と呼びます。見た目が新しくなるだけの話に見えますが、決めるところから財布に届くまでには、いくつもの段階があります。
- 改刷とは、お札の絵柄やデザインを新しくすること。いちばんの目的は、偽造を防いで、だれもが安心して使えるようにすること
- 様式は財務大臣が定めて告示し、発行するのは日本銀行。2024年の改刷は、2019年4月の発表時点では「2024年度上期をめど」で、細部はあとから決められた
- 発行日の2024年7月には、銀行などの機器も駅の券売機も、新しいお札にほぼ対応ずみだった。それでも2025年6月の時点で、新しいお札に切り替わったのは約3割
01 改刷とは?
改刷という言葉は、国立印刷局の説明では、お札の絵柄やデザインの入れ替えを指します。1885年に最初の日本銀行券が出てから、これまでに56種類のお札が発行され、細かい仕様の変更を除いた大きな改刷は14回ありました。
おもしろいのは、大きな改刷とは別に、見た目をほとんど変えずに中身を強める「部分改刷」もあることです。国立印刷局は、2つの例を挙げています。
- 1993年:1984年に出たお札(福沢諭吉の一万円札など3種類)に、マイクロ文字と特殊発光インキを加えた
- 2014年:樋口一葉の五千円札で、見分けやすくするためにホログラムの透明な層を改良した
財布の中の同じ顔のお札でも、出た時期によって中身が少し違うことがある、ということです。
02 なぜ改刷する?
国立印刷局によると、改刷を行うのは、新しい道具の登場で偽造の危険が高まったときなどです。そのつど、偽造を防ぐ新しい技術を盛り込み、デザインもまるごと新しくします。目指しているのは、使う人みんなが安心してお札を受け取れること。国立印刷局は、それを改刷のいちばんの目的に挙げています。
偽札が増えた時期もありました。そのきっかけとして国立印刷局が挙げているのは、パソコン、スキャナー、カラーコピー機の普及です。
2024年の改刷についても、財務省は2019年の発表で「偽造抵抗力強化等の観点から」と理由を書いています。このときは偽造防止に加えて、ユニバーサルデザインも柱になりました。指でさわって分かる識別マークの形と位置を変える、額面の数字を大きくする、といった見分けやすさの工夫です。新しい技術の中身はお札の偽造防止技術のしくみ、前のお札との違いは新紙幣と旧紙幣の違いにまとめています。
03 だれが決める?
お札のデザイン、つまり肖像などの「様式」を決めて世に示すのは、財務大臣の役目です。日本銀行法の第47条第2項に、そう書かれています。一万円・五千円といったお札の種類は、これとは別に政令で決まります。2024年のお札も、財務省告示で新しい様式が定められました。
決まったお札を発行するのは、日本銀行です。肖像の人物の選び方はお札の肖像画はどう決まる?にあります。
04 発表の時点で何が決まっていた?
2024年の改刷が最初に発表されたのは、2019年4月9日でした。財務省はこの日に「所要の準備に着手しました」と書いています。この時点で決まっていたことと、まだ決まっていなかったことを分けると、次のようになります。
発表の時点で示されたこと
- 一万円・五千円・千円の3種類を新しくする
- 肖像と裏の図柄
- 大きさは今のお札と同じ
- 主な偽造防止技術と、記番号を最大9桁から10桁にすること
- 発行は「2024年度上期をめど」
あとで決めるとされたこと
- ホログラムをはじめ、図柄などの細部
- 様式(告示で定める)
- 発行の日
発行日が決まったのは、2023年12月12日です。財務省はこの日、日本銀行法第47条第2項にもとづく告示で新しい様式を定めたうえで、2024年7月3日から発行すると発表しました。最初の発表から約4年半、発行までは約5年3か月です。その間の印刷開始式やサンプル閲覧会などの年表は、新紙幣はいつから?にまとめています。
作る側の準備も、発行よりずっと前に進んでいました。日本銀行の注文の記録を見ると、新しいお札は2022年度にすでに15.0億枚が注文されています。枚数の話はお札の製造枚数と製造費の記事にあります。
05 社会の側では何を準備する?
お札が新しくなると、作る側だけでなく、お札を扱う機械の側にも対応が必要になります。日本銀行の内田副総裁は2025年の講演で、改刷も「十分な準備」のもとに行う必要があると述べています。
副総裁の説明では、2024年の改刷で発行した7月の時点には、金融機関の機器に加え、駅の券売機なども、ほぼ対応を終えていました。ただ、道ばたの飲み物の自販機のように、新しいお札がまだ使えない機械もあるだろう、と付け加えています。
機械の対応は、二千円札の話でも出てきます。二千円札が広まらなかった理由として、日本銀行が最初に挙げたのが、ATMなどの機械の対応でした。その話は二千円札の記事にあります。
06 新しいお札はどれくらい広まった?
内田副総裁によると、2025年6月の講演の時点で、世の中に出回っているお札のうち約3割が新しいお札に切り替わっていました。
前回の改刷より遅い、という声もあるそうです。副総裁はその事情として、2つを挙げています。
- 世の中にあるお札の量が、20年前の1.5倍以上に増えていること
- 前回の改刷のときは偽札が見られていたため、新しいお札を求める声がとても強かったこと
もうひとつ副総裁が触れているのが、買い物の仕方の変化です。お札を使わずに、スマホや交通系カードで支払う人が増えてきた。その中での改刷だった、という点です。お札の量が増えていることは、入れ替わりが前回より遅い事情の一つとされています。
07 古いお札は使える?
財務省は2019年の発表のときから、新しいお札が出たあとも今のお札は引き続き使えると知らせていました。このとき財務省は、新しいお札の話題に便乗した詐欺にも触れています。古いお札は使えなくなると言われても、信じないでください、という注意です。古いお札の見分け方は古いお札の確かめ方にあります。
08 よくある質問
改刷はどのくらいの間隔で行われてきた?
これまでの間隔は日本のお札の歴史にまとめています。
500円玉も同じときに新しくなった?
2019年の発表では、新しい500円玉も一緒に発表され、発行の時期は「2021年度上期をめど」とされていました。くわしくは新しい500円玉と旧500円玉の違いにあります。
- 改刷とは、お札の絵柄やデザインを新しくすること。大きな改刷は14回で、見た目をほぼ変えずに中身を強める部分改刷もある。いちばんの目的は、安心して使えるようにすること
- 様式は財務大臣が告示で定め、日本銀行が発行する。2024年の改刷は、2019年4月9日の発表から約5年3か月かけて発行された
- 発行時には金融機関の機器や駅の券売機の対応がほぼ終わっていたが、2025年6月時点で新しいお札は約3割。世の中のお札の量が20年前の1.5倍以上あることも一因

